ユング思想の基礎知識

オカルト関連の話において「C.G.ユング」の名を見かける事が度々あります。これは(ユング自身はオカルティストではありませんが、)ユング思想の一部がオカルト現象や魔術の仕組みを説明するのに有用な理論を含み持っているためです。ユングを知らなくともオカルトは十分に語れますし、魔術の実践にあたっても支障を来たすような事は特にないのですが、やはり魔術師を目指すのであれば、ある程度知っておいた方が良いと言えるものではあります。

そこで、少しだけですがユングの思想に触れてみたいと思います(本腰を入れて扱うとかなり長くなるので、ここでは上辺だけを扱います。それで興味を持ったり、必要だと感じたりし、もっと深く知りたいと思ったならば、後は各自で学ぶようにします)。その際、ユングがどのような人間であったか、また、どのような環境で暮らし、どのような人間と関わり、どのような人生を歩んだかなどのユング個人の部分に関しては扱いません。これらの要素がユングの思想に大きな影響を与えた事は確かですが、ここではそれよりも「ユングの思想の内容」に重点を置いて紹介を進めて行きたいと思います。

最後に、ユングやフロイトは心理学の原点であると言えますが、(それ故に)そのまま通用するようなものではないと個人的には感じています。現在では彼らの考えを基礎としながら、発展させたり、修正を加えたり、または実用に耐え得るものだけを取り入れたりするなどして用いられているようです。二人の理論には仮説的な部分が多く(元々、哲学や心理学は何処まで行っても仮説の域を完全に出る事のないものだとも言われていますので、その事から考えるとこれは当たり前の事であると言えるのかも知れませんが…それにしても仮説的要素が強すぎるように感じます)、議論の余地も多分に残っているため、このような理論の発展や修正は不可欠且つ必然的なものだと言えるでしょう。

それはオカルトや魔術において彼らの理論を用いる際にも当て嵌まる事かと思われます。しかし、一部の隠秘学者(オカルティスト)や魔術師のように、オカルトや魔術にとって都合が良く使い易いものだけを取り入れ、その上、それをオカルトの理論的信憑性を(ユングの名前を使って)確保したいがために大した根拠も持たずに自分達の勝手な都合のままに加工したり、飛躍させたり、拡大解釈を行ったりするような遣り方(即ち、「自分達の行なっている事は怪しくないよ…ほら、ユングを使って証明も出来るしね」と言いたいがためにオカルトの側に合わせてユングを捻じ曲げる行為)には…稀に見かけますが…賛成し兼ねます()。しかも、独自に飛躍させたオカルト用の理論を、ユングに於いてはそれが一般的であるかの如き振る舞いで扱っている事もあります。そのような事はユングの理論をより怪しげなものへと変えて仕舞うでしょうし、それによって説明が為されたオカルトや魔術理論は、当然、信憑性を欠くものとなり、結果として魔術自体が(説明を行なった意図に反し)いんちき同然のものと見做されて仕舞う事となり兼ねません。(これではユングも魔術も共倒れです…。)ユングの理論はオカルト現象を論理的に説明(解明ではありません)出来る可能性を多く含んではいますが、それも使い方次第かと思います。

( そもそもユングを捻じ曲げずにオカルトや魔術を説明出来たからと言って、それがオカルトや魔術の信憑性を証明する事にはならないと思うのですが…捻じ曲げてまでユング(の名前)を使いたい人達なのでしょう。)

と…ここまで書いておいて言うのも気が引けますが…個人的にはユングの言ってる事は余り信じていません…。(だからと言って、ユング思想を正面から否定している訳ではありません。ユング思想が(その真偽は別にして)理論と実用において有益な面を多々含んだものである事は確かだと思います…。また、1つの方法としてユング心理学を用いて(ユング心理学的観点から)魔術を上手く説明(理論付け)する事も、その理論に基づいた形で魔術を行って行く事も十分に可能だろうとは思います…。)ユング心理学については、そのままでは捉える事の難しい心と言うもののために作られた数多くあるであろう物差しの中の1つに過ぎないと考えています。これはその他の心理学についても同じ考えなのですが、どれが正解と言う事ではなく、それぞれがそれぞれの特性を以て心を計るものであると…。

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