魔術習得後 - 魔術習得後 : 神への感謝の1週間・使い魔・実践時の注意など

6箇月間の祈りの日々と7日間の儀式とを終えた以降に必要となる事ついて書いています。

― 作業翌日(神への感謝の1週間) ―

「悪霊の召喚(喚起)の3日間」を終えた次の日から、術者は如何なる労働も行わなわずに、神を褒め称えるために1週間を費やします。そして、その7日間の間は如何なる術も使用せずに、また、どのような霊の召喚や、使い魔の召集も行わないようにします。

この7日間が過ぎれば、神聖魔術の力を使用しても構いません。

― 新たしく図表を得る場合 ―

以下は今回紹介した以外の図表を術者が新たに得るための方法です。

「守護天使」から図表を得る場合は「善霊及び聖なる霊の召喚の3日間」の第1日目と殆ど同じです。その際は「銀の板」を「祭壇」に乗せる前にその両面を「聖別の油」で触れ、「聖別」しておきます。後は同じように作業を進めて行きます。「銀の板」の上に新たな図表と、それに関しての霊の名前とが描き記されるので、術者はそれを写し取り、それからその図表を製作し、既に終了した図表と同様に(以前に行た図表の時と同様に)対象となる霊を呼び出し、図表に従うように誓わせるための作業を行います。

悪霊から図表を得る場合は「悪霊の召喚(喚起)の3日間」の第2日目と殆ど同じです。悪霊に図表を与えるように命じると作業に関連した王子が現れ、テラスの砂の上に図表を霊の名前と印すので、それを写し取ります。図表を製作した後、対象の霊を呼び出して誓わせるための作業を行います。

これらの作業(図表を手に入れる作業)に最適な日(最も都合が良い日)は「安息日」だとされています。なぜならば、そのような作業によって、我々はその神聖さ(尊厳)を侵害する事も、傷付ける事も一切ないからだとしています。(即ち、この作業に関してはそれ行っても、一切、神聖性が侵される事がない事から、安息日に行っても問題がない(「安息日」に禁じられている作業(労働)には当たらない)と言う事のようです。更に、礼拝(「安息日」に禁じている労働には当たらず、寧ろ、「安息日」に行う事とされている)などの神聖な行為と同等と見做しているのか、「安息日」に行っても問題ないだけでなく、(神聖な行為である事から、)寧ろ、「安息日」が最適だとしているのだろうと思います。)


『術師アブラメリンの聖なる魔術書』では『第二の書』の最後に於いて1つの章を割き神聖魔術についての助言を与えてあります。それは38項目にも上ります。その内容は魔術全体に亘っての様々な注意であり、その中には既に述べた6箇月間に関する事などの注意も含まれています。以下ではそれらを扱うのですが、全体的な注意や、6箇月間に関する注意については、それぞれに適した箇所で既に扱っている事から、(重複するので)ここでは省く事にし、また、然して重要でないものについては(扱わなくても特に問題はないので)それを理由に省く事にしました。そして、それ以外の部分(まだ扱っていないもので、重要度がある程度高いもの)…使い魔との関わり方について、術を実行する際に関して、他者に術を施す際に関して、今後のあり方についてから、特に重要と思われる部分を(その章以外の箇所にあるものも含めつつ)抜き出し、簡単に纏めました。(これらは既に天使の助言として授かっている筈であるため簡単に纏めるだけにしました。)

― 使い魔について ―

術者は、術者と使い魔の間に議論や言い争いの余地を許すべきではありません。もしそのような余地を与えれば、彼らは直ちに精神を苦しめ、混乱させる多くの要件を突き付けて来るでしょう。使い魔(や霊)とは(礼儀を払いながらも)厳しい主従関係を保ち、常にそれを崩す事のないようにして下さい。

術者が彼らに話し掛ける際には名前で呼ぶ事なく、如何なる時も「お前(You)」「汝(Thou)」とするようにし、また、術者は決して彼らを喜ばせるような言い回しをせずに、更に彼らに対して常に尊大で、傲慢な態度をとるようにしなければならない…とされています。(ここでは「アブラハム」がこのように言っているのですが、メイザースが繰り返し言うように、霊に対しては常に大きな礼儀を払うべきでしょう。然もなければ術者は直ぐに失敗を招く事になるとされています。)

使い魔に対しては図表を利用すべきではありません。しかし、[ 05-01 ] ~ [ 05-12 ] の図表はその限りではありません。(術を行う際は)術者が何を望むか、声を出してそれを実行するように彼らへと命令して下さい。

術者が術者の隣人を困らせるために使い魔を使用するのは易しい事ですが、例えば術者個人に対し行われた無礼を抑えると言ったような事でもない限りそれらは慎むようにして下さい。

使い魔を誰かに対し貸し与える際はその相手がそれに足る人物であるか如何かを十分に考慮して下さい。

― 術の実行に際して ―

作業を完了させ、そして今、真実の叡智の所有者となった術者は、その(術の)実践を始める前の3日間に断食を行わなければなりません。

術者は霊を強制する際、3日間の断食するべきです。これは必須です。これにより術者が(術を)行っている時、術者は身体と精神とに於いて共に自由、且つ穏やかな感覚を見出す事が出来ます。

悪用を目的として他者に術者の叡智を利用する事は出来る限り避けるようにし、第一に(術者は)術者が作用を与える相手について深く考えて下さい。何故ならば、他者に作用を起こす上で自分自身に悪い働きが起こる事がしばしばあるからです。

正当な仇討ちを除いては、術者の隣人を欺くために決してこの術を利用してはいけません。(「アブラハム」は正当な仇討ちを認めつつも、術者にそのような相手(正当な仇討ちの対象)でさえ許すようにとしています。そして世の中に於いて許す事以上に称賛に値するものはないと。)

術者は悪い結果を齎す図表については使用しないようにして下さい。また、術者にこのような事(悪い結果を齎す事)を果たすようにと依頼して来る個人がいるかも知れませんが、術者はその依頼を受けないように注意して下さい。

術者の天使が術者に思い留まらせ、果たす事を禁じた作業に於いては、頑なに行おうとしないようにして下さい。このような場合では術者は常に後悔をする事になるとされています。

もし、神への背信行為を行った場合はそれを(神に対し)告白するまでは術を使用しないようにして下さい。それを行わずに術を実行すれば神の恩寵を失う事になります。

もし、それ(その問題)が重要であれば、緊急に如何しても必要だと言う事がない限り、如何なる(重要な)作業も夜に始めないようにして下さい(重要なものに関しては夜に始めるなと言う事です)。

術者は、この作業を術者へと教え与えてくれた者、術者が、術者自身の父よりも大きな恩義のある者を除いて、(術を)他者へと明白な形で示さないようにします。(即ち、人前で行う事を避けよと言う事です。)

(初心者、見習いは)決して同時に多くの作業(術)を始める事なく、1つが完全に終了してから他を始めるようにします。(熟練者はその限りにないと思われます。)

霊に命令を実行させる際には、その命令がその霊に適したものであるか如何か、霊の性質や力量を良く考えてから行うようにします。配下霊には不可能であるような大きな事(問題)であれば上の霊(その霊を支配する霊)を呼び出し、命令します。命令した霊にそれが適していない場合、霊は従う事を拒否しますが、そう言った術者側の失敗ではないのにも係わらず霊が服従しない時には、術者は彼らを支配する霊を呼び、彼らに術者が誓わせた誓いと、誓いを破った時に待つ懲罰とを思い起こさせ、天使によって罰して貰うようにします。

術を使用する時は、霊の名前を呼ぶだけです。また、図表に触れたり、振る舞いで伝えるなど、好きな手段で命令する事も出来ます。特別な指示が必要な場合はそれをきちんと伝えるようにします。習得後は基本的には図表は必要なくなるので、どこか秘密の場所へと隠しておいても構いません。しかし、例えば他人と一緒にいて霊の名を呼べないなどと言った時には、これらの図表に触れる事によって霊に命令出来るため、手元に置いてあった方が便利かも知れません。人に知られないようにするのであれば、持ち歩く事も可能かと思われます。

善、または悪の霊と会話をする際は、術者が理解出来ない言葉を決して使わないようにして下さい。そして使い魔や霊とは、命令以外に話さないようにします。

霊を使役する場合は常に霊に対して礼儀を以て接さなければなりませんが、霊がそれを見て横柄で傲慢な態度をとるようであれば術者は強い態度に出るようにしても構いません。

作業(術)を行う際に、霊に対して目に見えて現れるようにと強く主張する事は滅多にあってはいけません。

本当に重要な理由なしで「4人の(上位)王子」、そして「8人の下位王子」を召集させるべきではありません。また、天使の力を直接借りる事も極力避けます。もし、術が使い魔によって実行出来るものであれば、そこに他の者(霊)を用いる必要はありません。

― 他者に術を施す場合 ―

術者は、術者の隣人にその必要性がある場合に(のみ)術を与えるべきです。そしてその際には術者は熱意を抱きそれを実行すべきです。(術者は自分から動かずに)彼(他者)がそれを術者に求めて来るまで待ち、(実行する前には)彼の最も必要としているものが何かを理解するように努めます。

術者は(他者に)これ(術)を与えても構いませんが、金銭を要求する事は許されません。それは術者にそれ(叡智)を与えた主の恩寵を裏切る行為です。これに反して行動を起こせば術者はその(術の)制御を失うとされています。

術者はどのような作業(術)を与える前にも3日間の断食を行わなければいけません。そしてそれ(術)を受け取る相手も同様に(断食を)行わなければいけません。また、その相手はその時に術者へとフローリン(Florin)金貨10枚(或いはそれと等価のもの)を渡さなければいけません(これが術者の利益となる事があってはいけません)。それは術者自身の手で術者が(その全てを)貧しい人々へ分配すべきです。更に術者は彼ら(貧しい人々)のために『詩編』、"Miserere Mei Deus(手元の『聖書』では『詩編 51』)" などを、そして "De Profundis(手元の『聖書』では『詩編 130』)" などを繰り返すようにします。(これと別の箇所では…術者が誰かに現在の作業を与える事を決断した時に(相手から) [ 7 Florin ] を受け取り、それを術者自身の手で純粋に貧困である7人に分配し、そして、その貧しき者達のために "the Seven penitential Psalms(「7つの懺悔の詩編」(手元の『聖書』では)『詩編 6』『詩編 32』『詩編 38』『詩編 51』『詩編 102』『詩編 130』『詩編 143』)" 、或いは "the Pater and Ave seven times a day" を7日間繰り返し、主に祈る事…とあります。)

術者は、術者がこの作業を与える相手を誓いによって縛らなければいけません。どのような神の冒涜者、或いは無神論者にそれ(神聖魔術の作用)を与える事も、(自分の利益のために)金銭を取得する事もしないと(誓わせます)。

― 魔術習得後の注意事項 ―

術者は全生涯の間に享楽的生活、特に不道徳行為、大食、酩酊を避けるべきです。そして常に神に対して正しくあるようにし、彼を畏れ、敬い、その栄光を称え、天使の教えを守るように心掛けます。

あらゆる類の悪の技術、魔術、魔法を避けるようにします。それらは全て悪の創作物だとされているためです。また、信頼出来るように見えたとしても、それらを教える書物に如何なる信頼も置いてはいけません。これらについては人々を捕らえて連れて行く手を差し伸ばす裏切り者の [ BELIAL ] の罠だとされているためです。術者は悪霊が誘惑して来たとしてもきっぱりと撥ね除けるようにして下さい。

術者自身、身体の清浄と衣服の清潔さを習慣付けるようにして下さい。これは非常に必要な事です。善悪両方の霊のために清浄を愛するのです。

術者は、主が術者に与えた利益を示し伝える記念日を毎年設けなければなりません。そのような時は断食し、祈り、更にその日は術者の全力を以て術者の「守護天使」を称えるようにします。

術者は自分の人生が終わる時まで、「安息日」には如何なる魔術的作業も、霊の召喚も一切行ってはいけません。それは神に捧げられる日であり、(その日は)自身も休息し、祈り、罪を清めるべきです。(その一方で図表を得る作業は「安息日」が最適とされています。これは、一見、矛盾しているように感じられます。しかし、(先述にもありますが、)図表を得る作業に関しては、それを行っても神聖性が侵される事が一切ないとされています。即ち、(「安息日」に禁じられていない)礼拝などの神聖な行為と同等と言う事なのだろうと思います。そのため、「安息日」に行っても問題なく、それどころか(神聖な行為である事から)「安息日」が最適とされているのだと思います。)

日中に於ける睡眠は絶対的な必要がない限りは一切禁じています。病弱のためであったり、或いは老いのためであったり、虚弱体質であったりする時は、(日中の睡眠が)それらの弱さに対し神が常に喜んで人々へと慈悲を送る時となるためそれ(日中の睡眠)が許されています。

術者が「ダビデ」の詩編の全てを繰り返す事は、作業が上手く、速やかに運ぶ事に繫がるとされています。これら(「ダビデ」の詩編)が多くの力と徳とを含んでいるためです。少なくとも週に2回はこれらを唱えるようにします。また、術者は、術者を悩ますだろう賭博を避けるようにします。それは常に神への冒涜の行いに当たるためです。

術者は(生涯に於いて)ただ2人に対しこの神聖な作業を教え与えても良いとされています。術者が3人目に与えた場合、彼(3人目)がそれ(神聖魔術)を習得する事は可能ですが、術者自身は永遠にそれ(神聖魔術)を失うとされています。術者は(神の)恩寵を以て十分に目を見開き、術者がその偉大な宝物(神聖魔術)を教え与えるに足る相手か如何かを完全に見極めなければなりません。

魔術習得後も隠遁生活を送るのが最善のようですが、これに従う必要は特にないものと思えます。

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