『ゲーティア : ソロモン王の小さな鍵』について

実際の作業の説明に入る前に『THE Goetia - The Lesser Key of Solomon the King』について少し書きます。

『The Lesser Key of Solomon the King(ソロモン王の小さな鍵)』と言えば、魔術に全く興味の無い方でも名前ぐらいは耳にした事があるのではないでしょうか。この『ソロモン王の小さな鍵』と言う名前は魔術書『Lemegeton(レメゲトン)』の第1の書である『The Goetia(ゲーティア)』の別名に当たります。(資料によっては『レメゲトン』自体の別名ともあります。)『ゲーティア』は数ある魔術書の中でも最も有名な部類に入る書物ですが、その呼び名としては『ソロモン王の小さな鍵』の方が有名なようです。

『ソロモン王の小さな鍵』と名前が似ているものに『The Key of Solomon the King(ソロモン王の鍵)』と言う書物があります。しかし、これは全くの別物の書物です。(『ソロモン王の鍵』は惑星霊の召喚方法などについて(必要以上に煩雑に長々と)記してある書です。)この『ソロモン王の鍵』は『The Greater Key of Solomon the King(ソロモン王の大きな鍵)』と呼ばれる事もあります。また、それぞれは『大鍵』、『小鍵』と略される事もあります。(呼び名が複数ありますが、ここではこれらを『大きな鍵』と『小さな鍵』と呼ぶ事にします。)『小さな鍵』はソロモンと銘打つくらいなので、大昔にソロモンが書き残したものかと思われる方もいるかも知れませんが、現在ではこれは17世紀に書かれたもであり、ソロモン自身の著書ではないとされています。

ソロモン王についても少し触れておきます。ソロモンはイスラエル第二代の王であるダビデと妻バト・シェバ(元人妻)との間に生まれ、ダビデの死後、その王位を引き継ぎイスラエル第三代の王となった人物です。在位はB.C.970~B.C.930年頃とされています。このダビデの家系は後に、ヨセフへと繫がり、そしてイエスへと繫がる事になります。王となったソロモンは神から与えられた優れた知恵により、「ソロモンの栄華」とまで言われる統一イスラエル王国の最盛期を築きました。七年で建てたと言われる「契約の箱を安置した神殿」や、十三年で建てたと言われる「王の宮殿」などの大規模な建築事業もこの時代、ソロモン王によるものです。ソロモンは老境に入ると異教の神々を容認し、それらの祭壇を建設するようになりました。しかし、この事によってソロモンは「唯一である神」の怒りを招き、「あなたの息子の代に王国を引き裂く」と宣告を受けます。ソロモンはB.C.926年に没し、父と同じくダビデの町に埋葬されました。その後は神の宣告の通り…後を継いだ息子レハブアムの代に王国は分裂し、衰退の一途を辿る事になります。神に愛されたソロモンによって繁栄を極めた統一イスラエル王国は、ソロモンの背信行為が原因となり、その死と共に栄華の幕を閉じたのでした…。

簡単に書きましたが、以上が一般的に良く知られているソロモン王の話でしょうか。しかし、ソロモンにはこれとは別にもう1つの伝説が残されています。それはソロモンが無数の悪魔を自在に使役した魔術の達人であったとする「魔術王ソロモン」の伝説です。この伝説では先に書いたソロモンの栄誉や富、神殿や宮殿の建築などもソロモンが無数の悪魔達の力を使って成したもの…と言う事になっています。そして、ここで扱う「ソロモンの72の悪魔」もソロモンが使役したこれらの悪魔達の中の一部であったと考えられています(そう言うお話になっています)。

この「72の悪魔」は最後にはソロモンの手によって、彼らの軍勢と共に「真鍮の容器」に封印され、バビロンの深い湖の底へと沈められてしまいます。ソロモンが如何してこのような事を行ったのかは定かではありませが(一説では彼らの「驕り」のためとされています)、少なくともこの時点では「72の悪魔」はこの世へと呼び出す事が出来なくなってしまったと言えます。しかし数百年経った後、悪魔達を封印したこの「真鍮の容器」はバビロニアの人々によって発見され、抉じ開けられます。この出来事によって「ソロモンの封印」が解かれたため、束縛から解放された悪魔達とその軍勢とは瞬時に外の世界へと飛び出し、その後、自分達の元いた場所へと戻って行きました。これにより以後の人間は再び「ソロモンの72の悪魔」を召喚(喚起)する事が可能となった訳です。因みに、バビロニアの人々が「真鍮の容器」を探し求めていた理由は、「ソロモンが湖に沈めたのは実は財宝だったのではないか」と考えたためだと言われています。しかし、財宝欲しさに「真鍮の容器」を探し出し、それを開けた事が結果的には「ソロモンの封印」を解いた事ととなり、そのお陰で「72の悪魔」が再び召喚(喚起)可能となったのですから…意図的ではなかったにせよ、バビロンの人々には感謝をしなくてはいけないところです(?)。

話を「ゲーティア」に戻します。ここで取り扱う「レメゲトン」の第1の書「ゲーティア」は「レメゲトン」の断章の中でも最も有名且つ重要なものとされ、そこにはソロモンが召喚し、使役したとされる「72の悪魔」の紹介と、その召喚(喚起)方法、そしてそれに必要な呪文などが記されています。これから「ゲーティア」に記されているこれらを利用して悪魔を呼び出し、最終的には自分の願望を適えるためにその力を借りる訳ですが、それは従来思い起こされるような悪魔上位のものではありません。そのため、悪魔の力を借りるために(良く聞くところの)「悪魔との契約を結んで…」や「XXXXと引き換えに○○○○を…」などと言った怪しげ極まりないような事は一切しません。これから紹介するのは、「神の名前と力によって悪魔を呼び出し、拘束し、自在に使役する」と言ったものであり、術者が悪魔よりも「優位な立場」に立って「命令」する形式の、謂わば術者が上位の悪魔召喚(喚起)であると言えます。(但し、術者の方が立場が上であっても悪魔達には礼儀を以て接さなければなりません。)こちらの方が「契約」や「代償」を必要とするものよりも遥かに安全性が高く、加えて「魔法円」の保護下にある限りは召喚(喚起)儀式中の危険もそれほど大きくありません。実際、準備をきちんとして、召喚儀式の間に「魔法円」の外へ出たりしなければ、きちんと安全性が保たれるものと思われます(但し、保証はありませんが…)。

そう書きはしたものの…やはり悪魔召喚(喚起)には多かれ少なかれ危険が伴うものと思われます。そのため、これ以降の召喚(喚起)作業は、全て自己の判断で行うようにして下さい。そして、何事があっても自己で責任を負える方のみにして下さい。

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