『術師アブラメリンの聖なる魔術書』について

『The Book of the Sacred Magic of Abra-Melin the Mage(術士アブラメリンの聖なる魔術書)』は、パリのアルセナル図書館(Library of the Arsenal)に埋もれたいたフランス語写本(この仏語写本の原文はヘブライ(ヘブル)語であったようです)からメイザースによって英語に翻訳されたものであり、彼の序文と注釈が付け加えられた形になっています。

「アブラメリンの聖なる魔術」はユダヤ人「アブラハム(Abraham the Jew)」がエジプトで「アブラメリン(Abra-Melin)」(生没年不詳)から授けられたものです。そしてこの書(の原文)はそのユダヤ人「アブラハム」が自分の息子、「ラメク(Lamech)」のために書き残したもとされています。(ここに出てくるユダヤ人「アブラハム」は中世(14~15C)に生きた人間であり、聖書にある同名の「信仰の父」と呼ばれる人物とは当然の事ながら異なります。)

彼が書き残したこの書は三部から構成されています。『第一の書(THE FIRST BOOK)』には彼が長い旅の末に「アブラメリン」に会い、叡智を授けられるまでの経緯と、この「アブラメリンの魔術」を行なう上での魔術体系の概念(魔術の背景となる概念)、そして全体の概要(流れ)、必要と思われる注意事項が、息子「ラメク」へと宛てられた形で書かれています。『第二の書(THE SECOND BOOK)』はこの三部から成る魔術書の最も重要な部分であり、「アブラメリンの魔術」の準備段階からその習得まで(即ち、天使の助力を得、悪魔に契約させ、彼らを使役出来るようになるまで)が書かれています。『第三の書(THE THIRD BOOK)』には数多くの図表が書かれています。これは悪魔に対して服従を誓わせる時に使用するものであり、その後は術の使用ためにも利用出来ます。『第二の書』と『第三の書』とが「アブラメリン」より受けた神聖魔術の内容であり、そこには「アブラハム」自身による追加も含まれています。これより紹介する内容についてもこの2つの書が中軸となります。

実行が困難であると思われる箇所について

『術師アブラメリンの聖なる魔術書』の中には現代人にとっては実行が難しいと思われる点が多々見られます。中でも一番の難点は(先では書かなかったのですが、)天使を召喚する際にそれを見る役の「童貞の児童」が必要とされいる事です。この子供は6~7歳、最大でも8歳である事…とされていますが(記述によっては7歳以上であるべきではないとしている箇所もあります)、一体何処から連れて来いと言うのでしょう…。

「アブラメリンの魔術」はその内容を「違わずに実践」するようにとされています。しかし、上述の「依童(前述の天使を見る役の子供)」の存在を含め、それ以外にも実践に困難が伴うと思われるものが数多く含まれています。これは実践をする上では非常に厄介であると言えます。そこで、紹介するに当たっては、こう言った無理が伴う箇所については、「如何してもそうでなければいけない」と言うもの以外は、問題がないと思われる範囲で実践し易いように内容を適応させつつ(実践可能なように手を加えつつ)紹介して行こうかと思います。そうでもしないと現代に於いては実践出来ませんので…。

カウンター
^