序文

ここで扱うのは「術師アブラメリンの聖なる魔術書」です。その中で紹介されている魔術(以降、「アブラメリンの魔術」と呼称)の修得方法を紹介して行きたいと思います。「アブラメリンの魔術」は魔術に興味がある者であれば一度は耳にした事があるのではないでしょうか。クロウリーとメイザースとの魔術対決の際に用いられた事でも有名かと思います。

ここで修得を目指す「アブラメリンの魔術」について全体を簡単に書くと…他人との関わりを絶って6箇月の期間に徹底的な自己の聖別を行い、「聖なる守護天使(Holy Guardian Angel)」を召喚して助力を得た後、悪魔(悪霊)を召喚(喚起)し、彼らを自分に従わせるための誓いをさせる…と言った感じになります。従わせた悪魔を使役する事によって様々な目的を果たす事が出来るようになるのですが、この悪魔との関係は(割合、耳にするところの)「契約型」ではなく、神の恩寵を得た自己がその力を以て相手を従属させて使役するものであるため、正確に実践出来さえすれば自己の安全も大きく確保出来るものとなっています。しかし、全く危険が伴わないかと言うとそうではありません。この魔術は習得するための期間に悪魔の妨害を受けるとされています。また、失敗に終わった人間に悲劇が訪れていると言う話も聞きます。ですので、ここでは「アブラメリンの魔術」を勧めるような事はせず、「アブラメリンの魔術」を自分から積極的に習得したいと考え、更に(悪魔の妨害などの)危険に対する十分な覚悟と、最後までやり遂げるための強い意志とを持った方を対象として話を進めて行きたいと思います。今後、一切の危険については自己責任となります。

今回、中軸として使用するのは以下の書となります。

『The Book of the Sacred Magic of Abra-Melin the Mage』
翻訳 : S.L.MacGregor Mathers(マグレガー・メイザース)

これはヘブライ(ヘブル)語で書かれていた原書からフランス語に訳された写本を更にメイザースが英語に翻訳したものです。英語で書かれいるため、ここでは翻訳し、(成る可く分かり易くなるようにと)纏めながら進めて行く事になるのですが、当然の事ながら、英語は苦手中の苦手です…。このままでは苦戦は必至です。そこで今回は手助けとなるであろう力強い味方を用意しました。それは以下です

『高等魔術・魔女術大系 1 - アブラメリンの魔術』
翻訳・編集 : S.L.MacGregor Mathers(マグレガー メイザース)
監修・製作 : アレクサンドリア木星王
訳 : 松田アフラ・太宰尚

この書は一言で説明するならば先の洋書の日本語訳本(現在は絶版)です(厳密に言うと完訳ではありません…)。これを参考にしながら洋書の訳翻を行う事により翻訳間違いの防止が望め、(ページ製作の編集等の)作業の短縮化が可能になる事と思います(全てこちらの都合の話ですが…)。

「最強の魔術」と謳われる「アブラメリンの聖なる魔術」は実践するには決して手軽なものとは言えませんが、出来る限り分かり易く紹介して行く積もりです。興味のある方はどうぞ最後までお付き合い下さい。

NOTE ― 1

「アブラメリンの魔術」に於いて最も重要なのは「聖なる守護天使の知識と交渉」を得る事です。本来、これこそが「アブラメリンの魔術」を試みる者の真の目的(とされるべきもの)であり、6箇月間に及ぶ長い祈りの日々も全てこのためだけにあるとさえ言えます。ここではこの先、「魔方陣」の使用や悪魔の使役を恰も術者の最終目標であるかのように扱い話を進めて行きますが、実際にはそれらは「聖なる守護天使の知識と交渉」を得た後のおまけのようなものであり、二次的なものでしかないと言う事を憶えておいて下さい。

(悪魔の使役はおまけのようなものだと書きましたが、だからと言って悪魔を従わせる作業を行なわなくても良いと言う事にはなりません。悪魔の使役を行なうか行なわないかに係わらず、悪魔を従わせる作業は必ず行なう必要があります。(個人的には悪魔を従わせる作業は「聖なる守護天使の知識と交渉」を得る事の次に重要だと思います。)「聖なる守護天使の知識と交渉」を得た者は自身の安全のためにも(心的均衡のためにも)悪魔を自らの統制下に置かなければならないからです。その後の悪魔の使役に関しては、それを行なうか如何かは術者の自由であり、然して重要ではない(必要性の問題でしかない)と言えます。)

(もし、この魔術を修得しようとする動機が「恋愛を成就させたい」「お金が欲しい」などと言ったようなものならば、現実的な努力をするか、(魔術的な作用で結果を得ようとするのであれば)別の魔術を試みるかした方が遥かに早いのではないかと思います。この魔術を習得すればそのような事にも使えるとはなっていますが、6箇月の自己聖別と言った大変な作業が伴いますし、そもそも、そのような事を目的として修得を目指すものではありません。(先に書いたような事を目的とした)様々な術が行えるようになるのは付随的なものに過ぎず、この魔術の修得を目指す上ではそこには目を向けないようにすべきかと思います。飽く迄も「聖なる守護天使の知識と交渉」を目的としたものです。)

NOTE ― 2

『術師アブラメリンの聖なる魔術書』の中でユダヤ人「アブラハム」と「メイザース」との意見が分かれているところについては、編集する際に殆どの場合を「メイザース」寄りのものとしてあります。「アブラハム」の言っている事については怪しい部分も多く見られますので…。

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