魔術の基礎知識を身に付ける

情報を集める

個人で魔術師を目指すからには必要な情報は自分で集めて行かなければなりません。そのための手段として非常に有効と思われるのが書籍・インターネットの利用です。

魔術関連の書籍は現在世界中に数多く出回っていますし、インターネットでは世界中の様々な人によって様々な情報が公開されています。この2つがあれば初心者(ここでは魔術入門前の者)にとって必要となる情報は殆ど揃うと言っても良いでしょう。

情報を集めて行く際に初心者の方は気を付けなければいけない事があります。それは、最初から怪しげな中世の魔術書や、扱っている内容が高度で難しい書物に手を出さないと言う事です。

そのようなものはある程度の知識を身に付けてから読むべきものだと言えます。必要な知識を持たない状態で読んだとしても、恐らくは、そこから何かを得ると言う事は非常に少ないのではないかと思われます。

例えば、中途半端な知識で怪しげな本に手を出して仕舞うと、そこに書いてある内容をそのまま闇雲に信じて仕舞う可能性もありますし、逆にその怪しげな内容を魔術の全てだと思い込み魔術を非常に疑わしものであると認識して仕舞う可能性もあります。また、高度な本に関しては知識がないまま目を通しても内容を読み取る事が出来ずに全くの門前払いとなって仕舞う事でしょう。

反対に必要となる知識をきちんと身に付けておきさえすればそのような事はなくなります。同じ怪しげな本であっても様々な視点を以て解釈して行く事が出来るようになりますし、無知故に全くの無益でしかなかったその本も(程度の差はあるにせよ)有益なものへと変化させる事が出来る可能性が生まれて来ます。また、高度な本に関しても(ゆっくりかも知れませんが)何となくは読めるようになるでしょうし、そこから(ぼんやりであっても)様々な情報を得る事が(段々と)出来るようになって行く事でしょう。

初心者の方は先ず基礎的な知識を身に付けながら、同時にその大切さも学んで下さい。知識が無益を有益へと変えて行くと言う事を最初に知りましょう。

必要な知識

さて、魔術師を目指すのであれば多岐に渡る知識が必要となるのですが、大きく分類すると極初期の段階において特に重要となるのは以下のようなものになるかと思われます。

  1. 魔術理論と魔術の基礎知識
  2. カバラの知識
  3. 神々や神話についての簡単な知識
  4. 聖書とユダヤ-キリスト教とについて
  5. その他の宗教的知識
  6. 錬金術、占星術、タロットの簡単な知識
  7. 西洋哲学、東洋哲学、心理学
  8. 易、ヨガ、東洋神秘などの知識
  9. 英語などの外国語の知識
  10. 魔術関連の雑学

これらをここで全て書き尽くすのは不可能に近い事なので、以下では1つずつ、その要点のみを見て行きたいと思います。先ずは何を知れば良いのかと言う事を知って下さい。初級魔術師を目指す上でこれらの事を予め一通り学んでおけば知識面で躓き(魔術書に目を通しても意味がわからない…などで)挫折して仕舞うと言う事は少なくなるのではないかと思います。

― 01. 魔術理論と魔術の基礎知識

魔術理論とは…「魔術とはどのようなものか」や「魔術とは如何にして作用するのか」などの事です。魔術は理論を知らなくとも作用するものではありますが、しかし、その理論を知らなければ何時まで経っても他の人が行なった事をただ繰り返し行なうだけの発展性や応用力のないものになって仕舞います。また、理論を知っているかそうでないかでは魔術を行なう際の自身の安全度も変わって来ますので(例えば、ただ手順をなぞる事しか出来ないような状態であれば有事の際に上手く対処する事は出来ないでしょう)、実践に入る前の初期の段階では理論を(表面的にでも)知っておく事(どのように起こり、どのように作用するのか、せめて何らかの形で(魔術的解釈だけでなく(ここではこれで進めますが)、科学的解釈でも、心理学的解釈でも構わないので)理解しておく事)が必要となります。(これは最低限の事であり、最終的には十分に信頼の置ける自分なりの実践的な魔術理論の形成を目指す事になります。)

魔術理論はその手の事が書いてある入門書的な本から知識として得る事が出来るかと思います。魔術理論には、大抵、人によってそれぞれ大なり小なりの差異があるため、著者の違う幾つかの優良と思われる書に目を通しておく必要があると言えるでしょう。

この手の本は自分の魔術理論を様々な例や科学と結び付けながら証明して行こうとするのが常なのですが、中には通常の思考の持ち主であれば論理の健全性が怪しいと思われるようなものも多々ある事と思います。その場合、怪しげだと感じたものは無理して鵜呑みにしなくても構いません。胡散臭いと思われるものは頭の片隅にでも置いておきましょう。そして魔術の修行の過程が進むに連れて実際の作用を体験するでしょうから、それからその時点で自分が信じられると思うもの、信じて構わないと思えたものを取り入れて行くようにして下さい。そうして経験を重ねて行きながら自分なりに理論を築き上げて行きます。(最初は単なる知識でしかなかった理論を、経験を得て行く中で、それに基づいたものとして自分なりに(実用的なものとして)仕上げて行きます。)

もし途中で違うように感じられるところがあれば、それもまた自分なりに修正して行くようにします。そのようにして出来上がった理論は、(勿論、自分が経験を積み、十分に納得している理論であれば、自分が学んだ本の内容と差異があっても構わないのですが、)恐らくは、大筋で本(優良とされる)に書いてあった内容と余り差異のないものになっている事でしょう。しかし、それは経験に基づいているため、自分が魔術を行なう上での基礎としてより信頼の持てるものとなっている事かと思います。(この魔術的経験と魔術理論が確りとするまでは難度の高い魔術には進めません。)

次に魔術の基礎的な部分について知っておく必要があります。これは…魔術とは実際にどのようにして行なわれるのか、魔術に用いられる道具にはどのようなものがあるのか、どのようにして作るのか、「魔法円」や「魔術武器」の役割は何であるのか、魔術における記号や合図にはどのようなものがあるのか…などのような魔術に関しての極基本的な知識の事です。最初の内は大雑把でも構いませんのである程度把握しておきましょう。このような事は魔術の基礎を扱っている書物であれば大抵は触れてあるかと思います。

― 02. カバラの知識

カバラの知識については中にはなくても構わない場合もあるのですが、現在はカバラを多少なりとも含んだ魔術が殆どであるため、大抵の場合に於いてはこれを学んでおく必要があると言えるかと思います。

魔術師が優先的に最も重点を置いて学ぶのは魔術仕様のカバラです。カバラには色々な流派があり、それぞれに差異があるのですが、魔術で用いている(魔術用に解釈を付けている)カバラもその発展系の1つだと言えます。魔術師にとっての基本となる現代的魔術的カバラを学んだ後、それ以外の流派や歴史などについて学ぶのも良いでしょう。

魔術師がカバラに於いて学ぶ必要があるのは、一者からの流出の概念、「生命の樹(32の小径)」とその構造、「文字カバラ(ゲマトリア、ノタリコン、テムラー)」などの内容となります。これは魔術的カバラについて書かれた専門書を数冊読んでおくのが良いかと思います(「瞑想」などで深い理解を得る前に先ず知識を得るようにします)。最初は極基本的な事だけでも構いません。そこから徐々に理解を深めて行くようにしましょう(そして、知るだけでなく、利用出来るようになる事も目指しましょう)。

カバラを知る事によって、それを含んで書かれている魔術書も理解し易くなります。

― 03. 神々や神話についての簡単な知識

神々や神話についての知識は様々な場面で必要となって来ます。

例えば、魔術関連の書物では神様の名前や神話の中の話が良く出て来ますが、その中ではそれらについての解説を一々書いていない場合も多くあます。その際、神様について知識がなければ文章から内容を正確に把握する事が難しくなる場合もあるかと思います。知識があればそのような事にはならずに済みます。

また、「瞑想」や召喚などを行なう際には、その性質からして、神様についての知識やイメージは必須になります()。

( 神々(特に実際に召喚する対象となる神々)に関しては魔術の実践段階を迎える前までに「単に知っているだけのもの」から「深い理解を持つもの」へと変えておかなければならないのですが、知識的な学習の段階ではこれらについては表面的な知識として知っているだけで構いません。初期の段階では学習を進めるための知識として身に付けておきましょう。)

神様や神話については幅広く知識を持つようにします。エジプト、ギリシア-ローマ、北欧、ケルト、アラブ、ヒンドゥーなど…。幸運な事に(?)この手の情報はインターネット上に数多く見られるので、それを積極的に利用して学んで行くと良いかと思います。本当は神話や神様について書かれている本が手元に数冊あれば良いのですが、事典系の書籍は値段も張りますので…。

― 04. 聖書とユダヤ-キリスト教について

西洋魔術を学ぶならば聖書とユダヤ-キリスト教に関する学習は避けて通れないと言えます。

キリスト教は西欧の歴史・政治・文化・思想…などの様々な面に於いて多大な影響を与えて来た宗教であると言え、西欧文化の大きな基盤となっている宗教です。そして、魔術の学習に使う事になるであろう西欧の文献はその影響下で書かれたものが殆どです。それら西欧の文献の中ではキリスト教に由来するものについて(例えば教義であったり、聖書の中の人物、物語、言葉であったり)知っているのが当然であるかの如く書き進めている事も多くあります。西欧の文献を読み進めるに当たって支障を来たさないようにするためには、キリスト教に関する知識を身に付けておく必要があると言えるでしょう。

キリスト教を学ぶ目的は(必要な知識を得ると言う事の他に)もう1つあります。それはキリスト教的な視点、感覚を(飽く迄も1つの視点、感覚として)身に付けると言う事です。これはキリスト教を単なる知識として学んで行くのではなく、本質的な部分、深い部分を(感覚的なものも含めて)理解して行く事()によって自然に身に付いて行くものであると思われます。

( これは学習のためにも大切ですが、実践においても使い勝手が変わって来るので、特に後者のためにも知識だけに留めずに理解を深める事は重要かと思います。)

このキリスト教的視点を(1つの視点として)身に付けておくとキリスト教との対比、類比で物事を見る事が出来るようになり、西洋の文献を捉えて行く事が非常に楽になります。(西洋の文献ではキリスト教との対比、類比や結び付きで見て行く部分が少なくありません。)これによって文献の中にある様々なもの(キリスト教の影響(良くも悪くも))が良く見えて来るようになります。(キリスト教が如何言うものであり、何を取り入れ、何を切り離し、何と結び付き、何に影響を与えて来たのか…などと言った事を感じる事が出来るようになるかと思います。)

この視点は魔術、カバラ、錬金術などの文献に目を通す際だけでなく、歴史、文化思想、哲学、文学、芸術などに触れる時にも役に立ちますし、また、西洋だけでなく東洋を見る時の(1つの)視点としても使えるかと思います。学習過程での拾い物を多くするためにも、是非、身に付けておきましょう。

また、魔術で用いる「象徴」郡の中にはキリスト教的な「象徴」も多く見られます。その事からも(飽く迄も「象徴」の1つの解釈方法として)キリスト教的な「象徴」解釈の感覚を(特に実践段階の事を考えて)持っておく必要があると言えます。そして、「象徴」をキリスト教的な感覚で掴むためには(キリスト教を知っているとい言うだけではなくて)、やはり、キリスト教への理解を深めておく(キリスト教的視点、感覚を身に付けておく)必要があると言えます。

以上の事から、学習過程(拾い物を多くする目的)の事を考えても、実践段階(「象徴」の感覚的把握)の事も考えても、キリスト教を学習して行く過程の早い段階から、キリスト教への感覚的な理解を深めて行くようにした方が良いと言えるでしょう。

― NOTE ―

(飽く迄も個人的な考えに過ぎませんが…)魔術を学ぶ上で宗教に触れる際には信仰心は必要ないかと思います。学問、思想として触れ、学び、そして心的影響力のあるものとしての理解、実感を深めて行くのが最善なのではないかと思います。

(宗教的な物事を魔術で扱う上では信仰心は必要ないと思います。信仰心がなくても恰も信仰心があるかの如くそれを働かせる事が出来るようにするのが魔術師です。信仰心を持つと偏りが生じるので(あればあったで強力な力となるのでしょうが、余計なものにもなり兼ねないので)、個人的にはなくても問題ない(のが魔術師である)と思っていますし、ない方が良いとも思っています。必要な時に(恰も信仰心を持った人間がそれを扱っているかの如く)利用するだけに留めていますし、偏りを持たずに魔術を行うためにはそれが出来なければいけないと個人的には思っています。ただ、信仰に対する理解は持った方が良いと思います。)

― 05. その他の宗教的知識

エジプトの古代宗教に関する事や、イスラム、ヒンドゥー教、仏教などに関するの事もある程度学んでおいた方が良いと言えるでしょう。文献を読み進める上でも、魔術を実践する上でも役に立ちます(特にエジプトは良く出て来ます)。

― 06. 錬金術、占星術、タロットの簡単な知識

錬金術や占星術の用語、それらが如何言うものかについて簡単に知っておく必要があります。理論的な部分も学んでおくと役に立ちます。

『タロット』についても(占いは出来なくても構いませんが)、カバラと絡めて学んだり(パスワーキングにも使えます)、「象徴」物としての理解を深めたりしておいた方が良いでしょう。

― 07. 西洋哲学、東洋(非西洋)哲学、心理学

西洋哲学には先に触れたキリスト教やカバラ、錬金術も含まれます。魔術の文献では古い哲学・思想を用いて魔術について語っている事もありますし、文献の中では哲学用語が当たり前の如く使われている事もありますので、用語も含めて様々なものの考え方…例えば、イデア論、グノーシス主義(グノーシズム)、ネオプラトニズム(新プラトン主義)、ヘルメス思想、カバラ思想など…を学んでおくと良いでしょう。

魔術は例え西洋魔術であっても東洋哲学・思想の影響を受けている部分が多かれ少なかれありますので、東洋哲学についてもある程度学んでおくと良いかと思います(勿論、深く学んで構いませんが初心者向けと言う事を考えると、最初はある程度で構わないと思います)。

また、現代魔術は心理学的観点から語られている事も多くありますので、哲学だけでなくフロイト、ユングなどの心理学(更にはその先にある心理学)についても学んでおいた方が良いのではないかと思います。

― 08. 易、ヨーガ、東洋神秘などの知識

ヨーガ(ヨガ)は西洋魔術にも西洋的な形になって取り入れられています。ヨーガ(ヨガ)に関しては、学んでおくのは西洋魔術に取り入れられた形のものだけで構わないと思います。但し、範囲を広げて元となったものを学ぶのも良いかと思います。

また、西洋魔術にはタントリズム(タントラ)、タットヴァなどと言った東洋から取り入れられたものも多くあります。東洋神秘についても(共通した事が言える部分、取り入れられた部分、役に立つかも知れない部分などもあるので)積極的に学んでおいた方が良いかと思います。

易も稀に出て来ますのである程度は知っておいた方が良いかも知れません。

― 09. 英語などの外国語の知識

学習の過程では知識を求めて行く上で和書、及び日本語サイトだけでは足りない場面も多々出て来ます。そう言った場合は大抵は洋書、或は海外サイトを漁る事になります。

基本的には英語がある程度読める事が望ましいと思います。「書けない」「話せない」は構いませんが、「読めない」のは情報量の激減に繫がりますので、何が何でも読めるようにはしておきましょう。(そう言う自分はアルファベットを「A」から順に全て言えない程に英語が苦手です…。)

後はその他の言語も読めるようになったり、ラテン語の簡単な単語が分かる程度になったりすれば、それはそれで良いかと思います。しかし、それらは「あるに越した事はない」と言うものであり、先ずは英語を身に付けるところから始めた方が良いと言えるでしょう。

― 10. 魔術関連の雑学

学習の過程で出会う書物の中には様々な人物や逸話が出て来る事があります。それらについてその書物の中で何時も詳しく解説されているとは限りません。雑学的な知識も学んでおくと良いでしょう。

但し、中には怪しげな話もありますので全てを鵜呑みにしないように注意が必要です(それはオカルト的な雑学に限らず、どの物事に対しても同じです)。


以上、簡単に書き出すと取り敢えずこれぐらいでしょうか。

上記に示した宗教、文化、哲学、思想以外に、西洋を中心にして歴史や政治などについても学んでおくと、西洋魔術を学ぶ上での手助けになるかと思います。

また、魔術師の中には東洋に目を向けた者も少なくありませんので、上記に示したように東洋についての幅広い知識も身に付けておきましょう。

カウンター
^