トートタロット

『トートタロット』は「A.クロウリー(Aleister Crowley)」によって考案された「タロット」です。絵は「レディ フリーダ ハリス(Lady Frieda Harris)」によるものです。

この『タロット』には「クロウリー」の思想が反映されており、扱うのには深いカバラの知識と理解に加え、クロウリーが言うところの「新しい永劫(アイオン)」(「ホルスの永劫」)の概念を理解しておく必要があります。更にエジプト、ローマ、ギリシャ、インドなどの神々や神話、ユダヤ教、キリスト教の知識、グノーシス主義系の知識、その他(ヒンズー教、拝火教、ディオニュソス信仰、ピタゴラス教など)の宗教的知識、ヘブライ語の知識、錬金術、占星術、土占術の知識、西洋哲学、東洋哲学、易やヨガ、東洋神秘についての知識など…多岐に渡る様々な知識が必要とされます。

デックの内訳

デックの内訳は通常、「大アルカナ(TRUMPS(ATU))」が22枚、「小アルカナ(WANDS, CUPS, SWORDS, DISKS)」が56枚の計78枚です。

  • アテュ : 0, I~XXI : 22枚
  • 小アルカナ :
    • 棒(ワンド)のスート : KNIGHT, QUEEN, PRINCE, PRINCESS / ACE / II~X : 14枚
    • 杯(カップ)のスート : KNIGHT, QUEEN, PRINCE, PRINCESS / ACE / II~X : 14枚
    • 剣(ソード)のスート : KNIGHT, QUEEN, PRINCE, PRINCESS / ACE / II~X : 14枚
    • ディスクのスート : KNIGHT, QUEEN, PRINCE, PRINCESS / ACE / II~X : 14枚

アテュ(鍵)

『ウェイト版タロット』と比較すると「大アルカナ(アテュ)」の幾つかに名称が異なりが見られます。

「大アルカナ(アテュ)」には「魔術師」が2枚追加されて3枚入っているものもあります。その場合、「大アルカナ(アテュ)」の枚数は(実際には「魔術師」は1枚しか使いませんが、デック上は)24枚になります。

小アルカナ

4組のスートは、『ウェイト版タロット』が「棒(ワンド)」「杯(カップ)」「剣(ソード)」「ペンタクル」であるのに対し、『トートタロット』は「棒(ワンド)」「杯(カップ)」「剣(ソード)」「ディスク」となっています。

「コートカード(人物札)」は、『ウェイト版タロット』が [ KING, QUEEN, KNIGHT, PAGE ] であるのに対し、『トートタロット』は [ KNIGHT, QUEEN, PRINCE, PRINCESS ] となっています。

「スモールカード(数札)」は、『ウェイト版タロット』とは異なり、1枚1枚に名称が付けられてます。

各スートの「スモールカード」は、『ウェイト版タロット』のような「人物が描かれた絵札」ではありませんが、絵札と言っても差し支えないものになっています。

照応の入れ替え

『トートタロット』でも、『ウェイト版タロット』と同様に、「VIII」と「XI」とで照応先が入れ替えられています。但し、『ウェイト版タロット』とは違い、配列順は変更されず、伝統的な配列順のままとなっています。

『トートタロット』では更に「ツァダイ」と「ヘー」との入れ替えが行われています。これまでは「星」が「ツァダイ」、(交換先に選ばれた)「皇帝」が「ヘー」だったのですが、この入れ替えによって「星」が「ヘー」、「皇帝」が「ツァダイ」に変わっています(「ツァダイ」と「ヘー」との他の配属も一緒に交換されています)。こちらも同様に、照応が変わってもカードの配列順(付けられている番号)は変えられていません。

「セフィロト(生命の樹)」の小径への配属では、ヘブライ文字の「小径」への割り当てはそのままで、「星」と「皇帝」との配置が交換されています。「ヘー」は「(15) コクマー - ティファレト」のまま、「ツァダイ」は「(28) ネツァク - イェソド」のままで、「星」が「(28) ネツァク - イェソド」から「(15) コクマー - ティファレト」に、「皇帝」が「(15) コクマー - ティファレト」から「(28) ネツァク - イェソド」に移動しています。(ヘブライ文字の「小径」への割り当ては固定したままで、他の配属も一緒に交換されています。)

『トートタロット』には「正位置」と「逆位置」の区別がありません。その代わり、カードは隣接する(または周囲の)カードから影響を受けるものと考え、隣接する(または周囲の)カードとの関係から「品位(格式)」…「好品位(well-dignified)」「悪品位(ill-dignified)」を読み取るようにしています。

カードの状況が「好品位」になるか「悪品位」になるかは、隣接する(または周囲の)カードが友好関係(協調関係、相生関係)か対抗関係(相剋)かで決まります。

カードの品位(品格)

『トートタロット』では「正位置」・「逆位置」の考えを採らずに「品位(品格)」を採用しています。

「品位」には「好品位(well-dignified)」と「悪品位(ill-dignified)」とがあり、どちらであるかは隣接する(或いは周囲の)カードの存在(影響)によって決まります。

「品位」を読む際は基本的には3枚一組で読んで行く事になります(それ以外もあります)。その際、中心のカードを軸として読むのですが、この際に周囲のカードの存在(影響)から「品位」を見て、それを含めて読むようにします。

「品位」と、それを決める隣接カードとの関係は以下のようになります。(強まる関係の場合は「好品位」、弱まる関係の場合は「悪品位」です。また、友好的な関係とは強まる関係で、対立する関係とは弱まる関係です。)

  1. 同種の「スート」だとより強まる。
  2. 反対の性質のカードだと弱まる。
  3. 「剣」は「ディスク」と対立する。
  4. 「棒」は「杯」と対立する。
  5. 「剣」と「杯」、「剣」と「棒」とは友好的。
  6. 「棒」と「剣」、「棒」と「ディスク」とは友好的。
  7. 2枚の反対のカードの間に位置するカードはどちらの影響も余り受けない。

1) 隣接するカードが同種の「スート」である場合、当のカードの本来の力(性質、意味、影響など)はより強まります(十分に発揮されます)。(参考程度 : 資料の中にはこれを「強め合う」とするものもありますし、「強い影響を受けるが強め合うものではない」とするものもあります。また、資料によっては「強まる」ではなく「良い影響を受ける」としているものもあります。)「好品位」の状態です。

2) 隣接するカードが反対の性質のカードである場合、当のカードの本来の力(性質、意味、影響など)は弱まります(損なわれます)。(参考程度 : 資料の中には「弱まる」ではなく「悪い影響を受ける」としているものもあります。)「悪品位」の状態です。

3-6) これは個別に書き出すと次のようになります。

  • 棒 - 杯 : 対抗
  • 棒 - 剣 : 友好
  • 棒 - ディスク : 友好
  • 剣 - 杯 : 友好
  • 剣 - ディスク : 対抗
  • 杯 - ディスク : 友好でも対抗でもない

隣接するカードが友好(協調、相乗)だと「高品位」となり、当のカードは強まり、隣接するカードが対抗(対立、相克)だと「悪品位」となり、当のカードは弱まります。

(参考程度 : これらの事から、カードが両隣のカードのどちらとも友好関係にある場合は、カードの力が強まる(或いは良い影響を受ける)度合いが更に強まり、カードが両隣のカードのどちらとも対抗関係にある場合は、カードの力が弱まる弱まる(或いは悪い影響を受ける)度合いが更に強まるとするものもあります。カードが両隣のカードのどちらとも友好関係、或いは対抗関係であっても、両隣のカード同士が対抗関係にある場合は (7) のようになります。)

7) 両隣のカード同士が対立し合うカードである場合、当のカードは周りのカードの影響を余り受けなくなります。(参考程度 : これとは逆に、両隣のカード同士が友好的な場合、当のカードは周りのカードの影響を強く受けるともされます。)

「好品位」「悪品位」はカードの力(性質、意味、影響など)の強弱であって、良し悪しとは関係ありません。

「好品位」「悪品位」を取り入れた場合、それを発揮出来る「スプレッド」を使う事になります。

スプレッドの向き不向き

『トートタロット』は、上述のように、周囲との関係から「品位(格式)」の良し悪しや、そのカードが受ける影響の強弱も含めて読んで行く必要があるため、「ケルト十字」などの「スプレッド」には不向きであると言えます。

ここで紹介している「スプレッド」の中では、「15カード法」がそれ向きです。

各カードについて

各カードの詳細は以下で扱っています。

『トートタロット』を学ぶ(理解する)ためには、カバラの知識を得るだけではなく、更に『トートの書』『法の書』『魔術の理論と実践』『777の書』『幻視と霊聴』などと言ったクロウリーの著作にも目を通しておくべきところです。中でも『トートタロット』を扱う上では『トートの書』は必読と言えます。


カウンター
^