生命の樹(セフィロト)

カバラ思想では万物(世界)は全て一者からの流出に起源を持つとされています。この一者はあらゆる存在の基盤と起源を潜在させる至高なる者であり、無限であり、(流出を起こすが)不可分にして不変なる者です。そして、無限にして不変なる一者からの流出の段階、過程(即ち、一者から始まる流出が世界を創造して行く段階、過程)を絵にしたものがカバラ思想の中核とも言える「生命の樹」(後述)となります。その中には人間も含めた世界の全てが含まれています。(逆に言うと、この世にあるものは全てこの樹の何処かに必ず収まる場所があります。)

一者から始まる無限の流出は「樹」を降りて行き、有限である物質界の形成へと至ります。この無限に流出する一者の原初のエネルギーは「樹」を下降するに連れて(即ち、世界の創造が進んで行くに連れて)その神性の純粋さを失っては行きますが、しかし、この原初のエネルギーの神性は完全に失われる事はなく、それは流出の終点である物質界にあっても(弱いながらも)存在し続けます。

カバラの理論では、「全て(世界)は一者を起源に持つ流出物であり、一者の神性を内に宿した存在である」と言う事になりますが、これは、この世の如何なるものも一者なくしては存在し得ない(※)と言う事、そして、(それぞれが別々の存在であるかの様に見えて、その内では)全ての存在が一者によって繫がれていると言う事、即ち、多(世界)は一なる者の下に1つであると言う事を表わしています。この事はカバラ思想が(厳密には)一元論であると言う事を示しています。カバラ思想を含んだ魔術も、当然、一元論を根本原理に置いています。(※この理論の内では(逆に)我々の世界の存在が一者の証明ともなっています。)

創造の四世界

「アツィルト界(OVLM ATzILVTh : Olahm Atziluth)」「ブリアー界(OVLM HBRIAH : Olahm Ha-Briah)」「イェツィラー界(OVLM HITzIRH : Olahm Ha-Yetzirah)」「アッシャー界(OVLM HOShIA : Olahm Ha-Assiah)」の「4つの世界」は、宇宙の「創造(神の顕現)」の4つの段階(過程)であり、「創造の四世界」と呼ばれます。

  • アツィルト界 … 元型界、創始界、神界、流出界、第一流出界…
  • ブリアー界 … 創造界、玉座(KVRSIA : Khorsia)、座天使界、第二流出界…
  • イェツィラー界 … 形成界、天使界、星幽界、第三流出界…
  • アッシャー界 … 表現界、活動界、物質界、第四流出界…

アツィルト界

「アツィルト界」は一者からの流出によって最初に産み出される世界、第一流出界です。元型界と呼ばれます。最も上位の(神(無限の流出の根源)に近い)世界、純粋神格の世界です。

ブリアー界

「ブリアー界」は一者からの第二流出界であり、「アツィルト界」(を通った一者の流出)から産まれます。創造界と呼ばれます。大天使の世界です。

イェツィラー界

「イェツィラー界」は一者からの第三流出界であり、「ブリアー界」(を通った一者の流出)から産まれます。形成界と呼ばれます。天使の世界です。

アッシャー界

「アッシャー界」は一者からの第四流出界であり、「イェツィラー界」(を通った一者の流出)から産まれます。活動界、物質界と呼ばれます。最も下位の(神から遠ざかった)世界です。


「四世界」は流出段階が先の方がより神に近く、後の方がより神から離れた世界(より流出の神性が劣る世界)であると言えます。「四世界」の内で我々が属しているのは(肉体も(顕在)意識も)最も神より遠く離れた世界、「アッシャー界」になります。これらの「4つの世界」はそれぞれが個別に分かれて存在しているのではなく、互いに影響を及ぼし合う連続した状態となっています。

「四世界」が相互に関連し合っていると言う事は、肉体(物質)の柵()さえ捨てれば我々も物質界より上位の流出世界との行き来が出来ると言う事を示しています。また、物質界より上位の流出世界において力を行使する(影響を確立する)事によって、それよりも下位の世界へと(流出原理によって)影響を与える事が可能であると言えます。この理論は(そのままの形ではないにしても)魔術の中でも良く見かけるものです。

( 万物が神性の流出の影響であるカバラ思想では、グノーシス的な思想とは違い、グノーシス的な思想で言うところの牢獄(肉体)ですら神性の流出の創造物なのですが、同じく神性の流出の創造物である精神の自由さと比べると精神の宿り先である肉体は精神ほど自由だとは言えません。)

「四世界」は神聖四文字、「IHVH」のそれぞれの文字に対応しています。「アツィルト界」が [ I] 、「ブリアー界」が最初の [ H ] 、「イェツィラー界」が [ V ] 、「アッシャー界」が最後の [ H ] となります。

生命の樹

「生命の樹(OTz ChIIM : Otz Chaiim)(Tree of Life)」は神からの流出(神性の流出)の段階、世界の創造の過程を1つの絵として表わしたものです。「生命の樹」は「宇宙(世界)の写像」であり、この「樹」中には神が創造した「全宇宙」、即ち、「マクロコスム(Macrocosm)(大宇宙)」と「ミクロコスム(Microcosm)(小宇宙、人間)」が含まれていると言えます。 「カバラ(QBLH)(Qabalah)」の中核を成す重要な図です。

「樹」は「マクロコスム」と「ミクロコスム」との複合図であり、「マクロコスム」的にも「ミクロコスム」的にも見る事が出来ます。「樹」は「マクロコスム」的には、客体、大宇宙、宇宙秩序、宇宙的諸力などを映し、「ミクロコスム」的には、主体、人間、人間の内的諸力などを映します。

10の「セフィラ」と22の「小径」

「生命の樹」は10の「セフィラ(SPhIR : Sephira)(sphere, number, emanation)(球、数、放射の意)」(複数形は「セフィロト(SPhIRVTh : Sephiroth)」)と、その「セフィラ」と「セフィラ」とを繫ぐ22の「小径(ShBILIN)(Shebilin)(Paths)」から構成されています。「32の小径」と言う言葉を目にする事があるかと思いますが、これは10の「セフィラ」と22の「小径」を合わせて指した表現であり、この場合、「セフィラ」は「小径」として数えられています。

生命の樹
[ 生命の樹 ]

10の「セフィラ」は「未顕現の三者( [0 ] [ 00 ] [ 000 ] )」(後述)からの流出によって産まれます。その1つ1つは神の影響が顕現に至るまでの諸段階、原初のエネルギー(神の放射(流出)、神性の流出)の特定の局面であり、また、その特定の局面のエネルギーを保持する器であり、無限なる「絶対者(Ain Soph)」(後述)と物質界との間の媒体であると言えます。

これら10の「セフィラ」は、「(1)ケテル(Kether)(The Crown : 王冠)」「(2)コクマー(Chokmah)(Wisdom : 知恵)」「(3)ビナー(Binah)(Understanding : 理解)」「(4)ケセド(Chesed)(Mercy : 慈悲)」「(5)ゲブラー(Geburah)(Strength : 力)」「(6)ティファレト(Tiphareth)(Beauty : 美)」「(7)ネツァク(Netzach)(Victory : 勝利)」「(8)ホド(Hod)(Splendour : 栄光)」「(9)イェソド(Yesod : Foundation : 基盤)」「(10)マルクト(Malkuth)(The Kingdom : 王国)」と呼ばれています。「未顕現の次元」からの最初の流出は「ケテル」であり、「ケテル」から溢れた流出は「コクマー」を産み、「コクマー」は「ビナー」を、「ビナー」は「ケセド」を…と言ったように連鎖して行き、最下層である「マルクト」にまで至ります。この過程で不均衡な力の流出として「クリフォト」(後述)が産まれます。

  1. ケテル(王冠)
  2. コクマー(知恵)
  3. ビナー(理解)
  4. ケセド(慈悲)
  5. ゲブラー(力)
  6. ティファレト(美)
  7. ネツァク(勝利)
  8. ホド(栄光)
  9. イェソド(基盤)
  10. マルクト(王国)

神性(神の本質)の流出は「樹」を下降するに連れて(即ち、神から遠ざかるに連れて)その純粋さを失って行きます。しかし、(純粋さこそ失って行くものの、)それは、「ケテル」から最も遠い「セフィラ」、流出の最下層である「マルクト」においても消える事なく存在しています。「生命の樹」(即ち、大宇宙と小宇宙)の中に神性の存在しない部分はありません。これはカバラ思想の1つの特徴であり、万物は全て神性を宿している(即ち、全ては内で神と繫がれている、神の下に1つである)と考えられます。

生命の樹 10のセフィラ
[ 生命の樹 10のセフィラ ]

能動的な「セフィラ」と受動的な「セフィラ」

10の「セフィラ」には能動的な「セフィラ」と受動的な「セフィラ」とがあります。しかし、いずれの「セフィラ」も流出の概念から、先行する「セフィラ」に対しては女性的、受容的、後に続く「セフィラ」に対しては男性的、伝達的であると言え、ある程度は両面的な性質を有している(男性的「セフィラ」にも女性的な性質が含まれている部分があり、女性的「セフィラ」にも男性的な性質が含まれている部分がある)と言えます。

「セフィラ」の属性

10の「セフィラ」にはそれぞれの属性があり、「ケテル」は「風の根源」、「コクマー」は「火の根源」、「ビナー」は「水の根源」、「ケセド」は「水」、「ゲブラー」は「火」、「ティファレト」は「火」と「水」、即ち「風」、「ネツァク」は「火」、「ホド」は「水」、「イェソド」は(ティファレトと同様に)「風」、そして「マルクト」は「地」となっています。「風」は「ケテル」「ティファレト」「イェソド」と言うように「中央の柱」(後述)を降ります。「火」は「コクマー」「ゲブラー」「ネツァク」「水」は「ビナー」「ケセド」「ホド」と言うようにして「慈悲の柱」(後述)と「峻厳の柱」(後述)との間を交互に降ります。「風」「火」「水」の性質は樹を降るに連れ、それぞれ混合され濁って行き、その純粋さを失って行きます。

生命の樹 セフィラの属性
[ 生命の樹 セフィラの属性 ]

「セフィラ」の均衡と対立

10の「セフィラ」の間には対立・均衡の関係があります。「ケテル」は「コクマー」(「火の根源」)と「ビナー」(「水の根源」)との上に立つ均衡(「風の根源」)です。原初の男性原理、男性性である「コクマー」は、原初の女性原理、女性性である「ビナー」と対立しています。父性愛であり、保存性と建設性を持つ「水」の「セフィラ」である「ケセド」は勇気であり、破壊的力の性質を持つ「火」的な「セフィラ」である「ゲブラー」と対立しています。美、調和である「ティファレト」はその両者(「火」と「水」と)の均衡(「風」)であり、また、「生命の樹」の全体の均衡でもあります。愛、感情、本能であり、自然の持つ諸力である「ネツァク」は、知性、思考であり、精神の持つ諸力である「ホド」と対立しています。アストラル的な力(勢力)(「ネツァク」)と形(形成力)(「ホド」)が1つとなって働く場、アストラル領域である「イェソド」は、「ネツァク」「ホド」の両者(「火」と「水」と)の均衡(「風」)です。「マルクト」は最下層に位置し、全ての流出を受け留めています。

「小径」への配属 - ヘブライ文字

各「セフィラ」を繫ぐ「22の小径」のそれぞれには「22のヘブル文字」が割り当てられています。

生命の樹 小径への配属 ヘブライ文字
[ 生命の樹 小径への配属 ヘブライ文字 ]

「小径」への配属 - 四大、七惑星、十二宮

四大、七惑星、十二宮では以下のようになります。

四大、七惑星、十二宮を合わせると [ 23] になりますが、実際に「22の小径」に割り当てられているのは四大の内の(我々のいる)「地」を除いたもの(残りの [ 22 ] )となっています。「地」と「第五元素(霊)」とを考慮に入れた場合(全てを合わせると [ 24 ] になりますが)、これらは「土星の小径」と「火の小径」とが持つ二重性質の中に割り当てられる事になります。即ち、「土星の小径」に「地」が、「火の小径」に「霊」が加えられます(似通った性質を見付けて二重に割り当てています)。

生命の樹 小径への配属
[ 生命の樹 小径への配属 ]

「(15)2-6の径(ヘー)」と「(28)7-9の径(ツァダイ)」との照応内容の入れ替えを取り入れた場合、四大、七惑星、十二宮の配属は以下のようになります。

生命の樹 小径への配属 15-28 変換
[ 生命の樹 小径への配属 15-28 変換 ]

配色

「生命の樹」は下図の様に配色されます。これは時には「小宇宙(the Minutum Mundum)」とも「色彩の小宇宙(Little Universe of Colour)」とも呼ばれます。「セフィラ」は女王の色階(反射色)、「小径」は王の色階(透明色)となっています。

「ケテル」「コクマー」「ビナー」は白、灰色、黒の3つの無彩色です。「ケセド」「ゲブラー」「ティファレト」は青、緋色、黄色(金色)の3つ原色です。「ネツァク」「ホド」「イェソド」はエメラルド色、オレンジ色、菫色です。これらは「ケセド」の青、「ゲブラー」の緋色、「ティファレト」の黄色から作られます。(「ネツァク」のエメラルド色は青と黄色、「ホド」のオレンジ色は緋色と黄色、そして「イェソド」の菫色は青と緋色の混合によって作られます。)「マルクト」はレモン色、オリーブ、小豆色、黒の4つの色に分けられます。これらは「ネツァク」のエメラルド色、「ホド」のオレンジ色、「イェソド」の菫色から作られます。(レモン色はエメラルド色とオレンジ色、オリーブはエメラルド色と菫色、小豆色はオレンジ色と菫色、黒は全ての色の混合によって作られます。これを青、緋色、黄色の三色で表わすと、レモン色は黄色が優勢になる様に、オリーブは青が優勢になる様に、小豆色は緋色が優勢になる様に三色を混合した色である言えます。そして黒は全てを同一の比率で混合した色です。)

「22の小径」の内、三元素の「小径」は「風」「水」「火」の順に黄色、青、赤の強められた色、七惑星の「小径」は「火星」「太陽」「水星」「金星」「月」「土星」「木星」の順に赤から菫色までの7つの段階的色相(虹の七色)、十二宮の「小径」は「白羊宮」から始まり「双魚宮」へと至る順に緋色から深紅色(ウルトラバイオレット)までの12の(ほぼ)段階的色相となっています。(「セフィラ」「小径」に照応する色については「万物照応表抜粋」を参照して下さい。)

生命の樹 配色
[ 生命の樹 配色 ]

「(15)2-6の径(ヘー)」と「(28)7-9の径(ツァダイ)」との照応内容の入れ替えを取り入れた場合、「生命の樹」の「径」の配色は以下のようになります。

生命の樹 配色 15-28 変換
[ 生命の樹 配色 15-28 変換 ]

四世界と生命の樹

「創造の四世界」のそれぞれにも「生命の樹」が割り当てられます。それらの4つの「生命の樹」は1つ1つが孤立しているのではなく、「創造の四世界」と同じように互いに影響を及ぼし合っています。それは、同一の空間に異なる次元として四重に重なり合い、互いに浸透し合っていると言えます(下図1枚目…イメージが上手く伝わるでしょうか…)。また、「四世界」は(それと同時に)「アツィルト界」から「アッシャー界」までが連続して1つの連なりを形成しているとも言えます(下図2枚目)。

後者の場合、「未顕現の次元」より起こる流出は「アツィルト界」の「ケテル」から下降して行き、「ブリアー界」「イェツィラー界」と進み、「アッシャー界」の「マルクト」にまで至ります。「アツィルト界」の「マルクト」は「ブリアー界」の「ケテル」、「ブリアー界」の「マルクト」は「イェツィラー界」の「ケテル」、「イェツィラー界」の「マルクト」は「アッシャー界」の「ケテル」に照応します(「マルクト」と「ケテル」とは、下図のように重ねて表現したもの以外にも、切り離された状態で2つを繫げている表現も見られます)。この「アッシャー界」の「マルクト」はその底面で「クリフォト」(後述)に隣接します。我々の世界は「アッシャー界」の「生命の樹」の「マルクト」になります。

生命の樹 四重
[ 生命の樹 四重 ]
生命の樹 四連
[ 生命の樹 四連 ]

1つの「生命の樹」の上に「創造の四世界」を見る事もあります。その場合は次のようになります。

  • アツィルト界 … ケテル
  • ブリアー界 … コクマー、ビナー
  • イェツィラー界 … ケセド、ゲブラー、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソド
  • アッシャー界 … マルクト
生命の樹 1261
[ 生命の樹 1261 ]

また、「創造の四世界」を「3つの三角形」(後述)の領域に見る事もあります。その場合は次のようになります。

  • アツィルト界 … ケテル、コクマー、ビナー
  • ブリアー界 … ケセド、ゲブラー、ティファレト
  • イェツィラー界 … ネツァク、ホド、イェソド
  • アッシャー界 … マルクト
生命の樹 3331
[ 生命の樹 3331 ]

未顕現の三者

「生命の樹」の(「ケテル」の)上には未顕現(否定的存在)の3つの次元があります。

  • 0 … アイン
  • 00 … アイン・ソフ
  • 000 … アイン・ソフ・アウル

「アイン(AIN : Ain)(無)」は「無(Nothing)」「否定性(Negativity)」「非実在(Nothingness)」「否定的存在(the Negative Existence)」「大いなる虚空(the Great Emptiness)」「絶対なる者(the Absolute)」「物質の不在(the Absence of Things)」「第一原因(the Prime Cause)」「あらゆる顕現の起源なき起源(the Originless Origin of all manifestation)」などと呼ばれており、それは知る事が出来ず、形容し難く、言語に絶するものであり、否定によってのみそれについて語る事が出来ると言われています。

「アイン・ソフ(AIN SVPh : Ain Soph)(無限)」は「無限(No Limit)」「無限なる者(造物主、神)(the Infinite)」「無限空間(Infinite Space)」「無限の時間(Eternity)」「原初の暗闇(the Primal Darkness)」「聖なる古き者(the Holy Ancient One)」「古き者の中の古き者(the Ancient of the Ancient)」などと呼ばれます。全ての存在の起源はここにあり、全てはここに戻ります。

「アイン・ソフ・アウル(AIN SVPh AVR : Ain Soph Aur)(無限光)」は「無限光(Limitless L.V.X)」と呼ばれます。「無限」なる「原初の暗闇」に生じた無限の光です。

最後の「アイン ソフ アウル(無限光)」が一点に凝集する事によって「ケテル(王冠)」が産まれ、流出が起こります。これら未顕現の3つの次元は無限に続く流出の根源であり、万物の「第一原因」(即ち、「神」)であると言えます。

「否定的存在の三重のヴェール」とも呼ばれます。

ダアト

10の「セフィラ」以外に11番目(※1)の「セフィラ(※2)」として「ダアト(Daath : DOTh)(知識)」があり(※3)ます(下図の点線の円)。「ダアト」は(下図のような平面図で示すならば)「ビナー」と「ケセド」の「セフィラ」を結んだ中間に位置(※4)している事になります。「ダアト」は不可視の「セフィラ」であり、「別の次元」に属しているとも言われています。また、「コクマー」と「ビナー」との調和、結合、「ケテル」の影などとも言われます。

(※1 厳密には数としては数えられない。)

(※2 厳密には「セフィラ」とは言えない。)

(※3 厳密には存在しているとは言えない。)

(※4 厳密にはこの位置に存在している訳ではない。)

生命の樹 ダアト
[ 生命の樹 ダアト ]

深淵

「ケテル」と「ティファレト」との間には「深淵(Abyss)」が横たわります。「深淵」は上位の3つの「セフィラ」と下位の7つの「セフィラ」を分断しています。前述の「ダアト」はこの「深淵」を跨ぐようにあります。

生命の樹 深遠
[ 生命の樹 深遠 ]

3本の柱

「生命の樹」には「3本の柱」を見る事が出来ます。これは「セフィラ」を縦に結んだもの(柱)であり、次のようになっています。

  • 慈悲の柱 … コクマー、ケセド、ネツァク
  • 均衡の柱 … ケテル、(ダアト、)ティファレト、イェソド、マルクト
  • 峻厳の柱 … ビナー、ゲブラ、ホド

「慈悲の柱(Mercy)」と「峻厳の柱(Severity)」(或は「裁きの柱(Judgment)」)とは男性的・女性的、能動的・受動的、力・形と言ったように対極の関係にあり、「均衡の柱(Balance)」はその中間にあって双方の均衡を保ちます。

「慈悲の柱」にある「セフィラ」は男性的(能動的積極的)な「セフィラ」であり、「峻厳の柱」にある「セフィラ」は女性的(受動的消極的)な「セフィラ」であると言えます。(但し、男性的な「セフィラ」であってもその中にも女性的な部分を含み持っていますし、女性的な「セフィラ」であってもその中にも男性的な部分を含み持っています。)男性的(能動的積極的)な「セフィラ」は女性的(受動的消極的)な「セフィラ」に対しての刺激者です。女性的(受動的消極的)な「セフィラ」は、それ自身では受動的ですが、刺激を受け取ると活性化され、反応としての活動を始めます。「中央の柱」にある「セフィラ」は対立する「セフィラ」の均衡の場です。

「慈悲の柱」にある「セフィラ」は力(勢力)の「セフィラ」であり、「峻厳の柱」にある「セフィラ」は形(形成)の「セフィラ」であると言えます。形の「セフィラ」は力の「セフィラ」から入り込んで来る流れに形(制限)を与えます。

「慈悲の柱」は「力(勢力)の柱(the Pillar of Force)」「白の柱」「平穏の柱」などとも呼ばれます。

「均衡の柱」は「意識の柱(the Pillar of Consciousness)」「中央の柱」「中庸の柱」「黄金の柱」「喜びの柱」「光の柱」「夜の火の柱」などとも呼ばれます。

「峻厳の柱」は「形(形成)の柱(the Pillar of Form)」「黒の柱」「苦しみの柱」などとも呼ばれます。

「慈悲の柱」と「峻厳の柱」とはソロモンの神殿の2本の柱、「Jachin : ヤキン(神が打ち立てる)(神の愛)」と「Boaz : ボアズ(その中に「力」が存在する)(神の試練)」とであり、その2本の柱の間に位置する「均衡の柱」は「意識の柱」、即ち、神殿の前に立つ「人間」であると言えます。

生命の樹 三本の柱
[ 生命の樹 三本の柱 ]

3つの三角形

「生命の樹」は次の様に「3つの三角形」で分類する事が出来ます(下図)。

  • 至高の三角形 … ケテル、コクマー、ビナー
  • 倫理の三角形 … ケセド、ゲブラー、ティファレト
  • 星幽の三角形 … ネツァク、ホド、イェソド

第一の三角形である「至高の三角形」は「ケテル」「コクマー」「ビナー」から成る上向きの三角形です。「深淵」より上にある唯一の三角形です。創造の原理を司っています。

第二の三角形である「倫理の三角形」は「ケセド」「ゲブラー」「ティファレト」から成る下向きの三角形です。第一の三角形の反映であり、形成の原理を司っています。

第三の三角形である「星幽の三角形」は「ネツァク」「ホド」「イェソド」から成る下向きの三角形です。第一の三角形の反映である第二の三角形の反映であり、魔術の原理を司っています。

「3つの三角形」の内には(「3本の柱」がそうであったように)対立と均衡の原理が見られます。「至高の三角形」に於いては「コクマー」と「ビナー」とが対立し、「ケテル(ダアト)」がその均衡を執っています。「倫理の三角形」に於いては「ケセド」と「ゲブラー」とが対立し、「ティファレト」がその均衡を執っています。「星幽の三角形」に於いては「ネツァク」と「ホド」とが対立し、「イェソド」がその均衡を執っています。

第十の「セフィラ」である「マルクト」はこれらの「3つの三角形」には属しておらず、「星幽の三角形」の「イェソド」から垂れ下がった形となっています。

「3つの三角形」はそれぞれ、「知性の世界(OVLM MVShKL : Olahm Mevshekal)」「倫理の世界(OVLM MVRGSh : Olahm Morgash)」「物質の世界(OVLM HMVTHBO : Olahm Mevethau)」と呼ばれる事もあります。

生命の樹 3つの三角形
[ 生命の樹 3つの三角形 ]

燃える剣と叡智の蛇

「生命の樹」の図には10の「セフィラ」を番号順(流出順)に繫いだものが剣(または稲妻)として表わされる事があります。これは「セフィラ」の流出の径路(創造の過程)を辿ったものであり、「燃える剣(炎の剣)」(または「稲妻の閃き」)と呼ばれます。「燃える剣」は「ケテル」が柄、「マルクト」が剣先となっています。

「生命の樹」の図には「22の小径」に巻き付いている蛇が表わされる事があります(図なし)。これは「小径(文字)」を昇る蛇であり、「ネフシュタン(Nehushtan)の蛇」「叡智の蛇」と言われます。この蛇の尾は「タウ」の中にあり、頭は「アレフ」の中にあります。蛇は「小径」を結びますが、「セフィラ」には触れはしません。

生命の樹 燃える剣
[ 生命の樹 燃える剣 ]

邪悪の樹(逆しま(逆さま)の樹)

「邪悪の樹」は10の「クリファ(QLIPh : Qlipha)(売春婦、外殻)」(複数形は「クリフォト(QLIPhVTh : Qliphoth)」)より構成される「生命の樹」の否定的な側面であると言われています。「樹」を構成する各々の「クリファ」は「セフィラ」が生まれ行く中で不均衡な力の流出として生じるものです。

「邪悪の樹」は、そう言った名前の樹が(「生命の樹」とは別に)存在していると言う訳ではありません。「生命の樹」の歪んだ影であり、流出の神性を最も欠いた状態、流出の根源である神から最も遠い状態、流出の外殻、堅い樹皮であると言えます。

(これは性質が反転しているのであって上下が反転していると言う意味ではありません。(「生命の樹」は樹状で描く際には天に根(根源)を持ち、地に葉(顕現)を付けた、上下が逆転した「倒立した樹」として描かれますし、そう言う呼び名も持っています。樹状に見立てた場合、元々、逆さまです。)

天上の人間

10個の「セフィラ」から成る「生命の樹」は「マクロコスム(大宇宙)の人間」「天上の人間(Heavenly Man)」「原初のアダム(ADM QDMVN : Adam Qadmon)(Protogonos)」「原初の人間(ADM OILAH : Adam Auilah(Oilah))(Primordial man)」「第一のアダム(Adam Primus)」とも呼ばれます。「ミクロコスム(人間)」「地上のアダム」に対比するものです。

霊魂の部位

霊魂の動的原理は自己充足的な三部分から成るとされています。「生命の樹」に於いては以下のようになります。

  • ネシャマー … ケテル、コクマー、ビナー
  • ルアク … ケセド、ゲブラー、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソド
  • ネフェシュ … マルクト

「ネシャマー(NShMH : Neshamah)」は「理性を備えた霊魂」です。この部位は更に3つに分かれます。それは、「自己(不可分なる自己)」である「イェキダー(IChIDH : Yechidah)」、「生命の躍動(生命力)(真の意志)」である「キアー(ChIH : Chiah)」、「直感」である「ネシャマー」の3つです。これらは順に「ケテル」「コクマー」「ビナー」に属します。「ルアク(RVCh : Ruach)」は「知性(打算的心)」であり、その中心となるのは「ティファレト」です。「ネフェシュ(NPhSh : Nephesh)」は「知覚、感覚と言った動物的霊魂」です。

人間の構成部位

人間の構成部位は「生命の樹」に於いては次のようになります。

  • ネシャマー … ケテル、コクマー、ビナー
  • ルアク … ケセド、ゲブラー、ティファレト、ネツァク、ホド
  • ネフェシュ … イェソド
  • グフ … マルクト

「ネシャマー」は「イェキダー」「キアー」「ネシャマー」の3つに分けられます。それらは順に「ケテル」「コクマー」「ビナー」に属します。「ルアク」は5つの「セフィラ」から成りますが、その中心となるのは「ティファレト」です。「ネフェシュ」は「イェソド」に属します。「肉体(物質)」である「グフ(GVPh : Guph)」は「マルクト」に属します。

構成部位には次のように「ネフェシュ」と「グフ」とを「マルクト」に割り当てた分類も見られます。

  • ネシャマー … ケテル、コクマー、ビナー
  • ルアク … ケセド、ゲブラー、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソド
  • ネフェシュ - グフ … マルクト

また、次のように「3つの三角形」に対応させた分類も見られます。

  • ネシャマー … ケテル、コクマー、ビナー
  • ルアク … ケセド、ゲブラー、ティファレト
  • ネフェシュ … ネツァク、ホド、イェソド
  • グフ … マルクト

聖なる家族(IHVH)

神聖四文字、[ IHVH ] の [ I ] は「至高なる父」、[ H ] は「至高なる母」、[ V ] は「息子」、[ (最後の)H ] は「娘」であり、「生命の樹」に於いては次のようになります。「息子」は6つの「セフィラ」から成りますが、その中心となるのは「ティファレト」です。

  • 至高なる父 … コクマー
  • 至高なる母 … ビナー
  • 息子 … ケセド ゲブラー ティファレト」「ネツァク」「ホド」「イェソド」
  • 娘 … マルクト

「娘」は「息子」の「花嫁」であり、「息子」と結婚する事によって「母」となり、「マルクト」から「霊の玉座」「母の玉座」である「理解」「ビナー」へと上昇し、「父」「コクマー」を呼び起こし、伴い(結合し)、「王冠」「ケテル(絶対者)」へと至る(回帰する、再吸収される)と言われています。

三位一体

「王冠(マクロプロソポス)」「王(ミクロプロソポス)」「女王(花嫁、ミクロプロソポスの花嫁)」のカバラ的三位一体は「生命の樹」に於いては次のようなります。「王」は6つの「セフィラ」から成りますが、その中心となるのは「ティファレト」です。

  • 王冠 … 「ケテル」
  • 王 … ケセド、ゲブラー、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソド
  • 女王 … マルクト

「父なる神」「子なる神」「聖霊」のキリスト教的三位一体は「生命の樹」に於いては次のようになります。

  • 父なる神 … ケテル
  • 子なる神 … コクマー
  • 聖霊 … ビナー

これは天上に於ける三位一体の配属です。ユダヤ教では「コクマー(IHVH)」が至高神として扱われています。「ビナー」は「天上の母」「(被昇天後の)聖母マリア」の座でもあります。また、神の三相は次の様にも配置されます。「子なる神」は6つの「セフィラ」から成りますが、その中心となるのは「ティファレト」です。

  • 父なる神 … ケテル
  • 子なる神 … ケセド、ゲブラー、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソド
  • 聖霊 … マルクト

この場合、「ケテル」の「父なる神」は天上に座する至高神であり、「ティファレト」の「子なる神」は地上に於いて「受肉した神」であり、「マルクト」の「聖霊」は「受肉した神」と共にあり、そして彼が地上を去った後に天上の「父なる神」によって人類へと送られた「聖霊」、即ち、全人類の内に宿る「聖霊(神の霊)(真理の霊)(Shekhinah)」であると言えます。「受肉した神」の本質は天上世界である「コクマー」に、人の内に宿る「聖霊」の本質は同じく「ビナー」にあります。

(「イェス・キリスト」を中心に据えて言うと…彼の言う「父」、彼の後ろで輝く光、人々が彼を介して求める光が「ケテル」「父なる神」であり、彼(「キリスト」)を「マリア」に懐胎させた「聖霊」が「ビナー」であると言えます。彼は地上へと降り受肉した「コクマー」「IHVH(ユダヤの唯一神、至高神)」であり、その内に「ビナー」「聖霊」を宿した存在であると言えます(それぞれの本質は天上のそれぞれにあります)。彼は地上に於ける「子なる神」「神の息子」「神人」「受肉した神」、受肉し、犠牲となり、復活する者、「ティファレト」であると言えます。地上に於いて肉体の内に宿り輝く「聖霊」(その本質は天上の「ビナー」にあります)が「マルクト」であると言えます。「キリスト」が去って彼の約束通りに天上の「父」よって人類へと送られた「聖霊」は、「キリスト」へと降りて来て彼と共にあった「聖霊」と本質的には同じものであり(共に本質は天上の「ビナー」にあります)、これは人類が「神人」へと辿り着ける可能性であるとも言えます。)

「聖霊」を「イェソド」に割り当てた場合は次のようになります。

  • 父なる神 … ケテル
  • 子なる神 … (ケセド、ゲブラー、)ティファレト(、ネツァク、ホド)
  • 聖霊 … イェソド
  • 地上 - 人間 … マルクト
カウンター
^