生命の樹 : 10のセフィラ

生命の樹 セフィラ
[ 生命の樹 セフィラ ]

1. ケテル(KThR : Kether) - The Crown

「ケテル」は「王冠(The Crown)」を意味します。「ケテル」は未顕現者が一点へと凝集して顕現した第一の「セフィラ」です。「ケテル」は他の9つの「セフィラ」を(未分化の状態で)潜在的に含んでおり、ここにはあらゆる万物が全くの未分化の状態で潜在していると言えます。「ケテル」では万物の潜在力が単一の状態にあります。多が純粋なる一となって輝いているのがこの「ケテル」です。「ケテル」は純粋存在、流出の神性(神の不滅なる本質)の統一であり、生命の根源、暗闇から上がって来る光の発生源であり、第一動者(動因)、造物主、原動者、万物の父であると言えます。

「ケテル」は「中央の柱」の頂上に位置します。「ケテル」は「至高の三角形」の頂点にあり、その底辺に「コクマー」と「ビナー」とを従えています。第二の「セフィラ」である「コクマー」が男性的極性、第三の「セフィラ」である「ビナー」が女性的極性を持つのに対し、「ケテル」は双方の性質を含んでいると言えますが、しかし、それは陰陽が同時にあると言う両性的(水星的)なものではなく、両極が分化するそれ以前の状態です。

「ケテル」には「原初動の天球(RAShITh HGLGLIM : Rashith Ha-Gilgalim(Sphere of Primum Mobile)」が与えられています。「ケテル」は宇宙の原初の原動力の源であると言えます。

「ケテル」に照応する神名は「AHIH : Eheieh(I am)」(Exodus 3:6)です。大天使は「MTTRVN : Metatron)」、天使は「ChIVThHQDSh : Chaioth ha-Qadosh(Holy living creatures)」です。

「ケテル」の魔術的イメージは「横顔で見られる古代の髭のある王」です。この王はこちら側に顔の(右)半分を見せ、残りの(左)半分は裏側、即ち、我々が決して除く事の出来ない「未顕現の三者」の側に隠されています。横を向いた王は顕現世界と未顕現世界の両方を見る者です。これは「王冠」の持つ性質と一致します。「王冠」は神と人間を繫ぐ環であり、人間の頭上にあって天上と人間、明かされた部分と秘められた部分とを結ぶ役を担うものであるからです。

「ケテル」は「ARIK ANPhIN(the Vast(Greater) Countenance)」、「マクロプロソポス(the Macroprosopus)(大きな貌)」と呼ばれます。

「ケテル」はその後ろにある「未顕現の三者」を伴い(「ケテル」はその性質から「アイン・ソフ(神)」と1つに括られて同じように扱われる事も多く見られる)、「隠れた者の中の隠れた者(TMIRA DTMIRIN)(the Concealed of the Concealed)」「古き者の中の古き者(OThIQA DOThIQIN)(the Ancient of the Ancient)」「聖なる古き者(OThIQA QDIShA)(the Most Holy Ancient One)」「古き者(OThIQA)(the Ancient One)」「日の老いたる者(OThIQ IVMIN)(the Ancient of Days)」「原初の点(NQDH RAShVNH)(the Primordial Point)」「滑らかな点(NQDH PhShVTh)(the Smooth Point)」「白い頭(RIShA HVVRH)(the White Head)」「不可解な高み(RVM MOLH)(the Inscrutable Height)」などと呼ばれます。

777キースケールは [ 1 ] です。

2. コクマー(ChKMH : Chokmah) - Wisdom

「コクマー」は「知恵(Wisdom)」を意味します。「ケテル」より流出した第二の「セフィラ」であり、「ケテル」の反映です。「コクマー」は [ AB : Ab(the Father) ] [ ABA : Aba(the Father) ] 「父」と呼ばれます。また、「形成の力(KChMH)(Power of Yetzirah)」 [ IHVH ] 「IHVHのI」とも呼ばれます。

「コクマー」は「慈悲の柱」の頂上に位置します。「ビナー」と同一の次元(水平)にあり、対を成す「セフィラ」です。

「コクマー」は神の超絶的な男性性、原初の男性原理であり、男性的能動的精力的な(潜在的)力、生命の力動的躍動的活動的な力、生きるためのエネルギー、生きる意志であると言えます。それは未限定、未組織、無形の状態で流れる動的創造の力、純粋衝動です。また、「コクマー」は言葉、ロゴス(logos)、精神的創造力でもあります。「コクマー」は受動的で静止的な「ビナー」を活性化する刺激者です。

「ケテル」には「黄道帯、または恒星の天球(MSLVTh : Masloth)(Sphere of the Zodiac, Fixed Stars)」が与えられています。

魔術的イメージは「髭を生やした男性の姿」です。「コクマー」に与えられた神の名は [ IH : Yah(IHVH) ] 。大天使は [ RTzIAL : Ratziel ] 、天使の軍勢では [ AVPhNIM : Auphanim(Wheels) ] 、「車輪(the Wheels)」 (Ezekiel I)です。

「コクマー」は神聖四文字、[ IHVH ] の [ I ]です。

777キースケールは [ 2 ] です。

3. ビナー(BINH : Binah) - Understanding

「ビナー」は「理解(Understanding)」を意味します。「ビナー」は [ AMA : Ama(Mother) ] 、「母」と呼ばれます。また、[ AIMA : Aima(the great productive Mother) ] 、実り豊かな大いなる母、「大いなる海(the Great Sea)」とも呼ばれます。[ Ama ] は暗い不毛の母であり、[ Aima ] は明るく身篭った母です。「Aima」は「ヨハネの黙示録(Revelation(Apocalypse))」の第十二章に記述されている女性です。

神聖四文字、[ IHVH ] に於いて [ I ] は「父」、[ (最初の)H ] は「母」であり、[ (最初の)H ] は [ I ] により受胎させられ [ V(息子) ] を身篭り、生じると言われています。この [ BINH ] と言う語の中には、その「父」「母」「息子」、即ち [ I ] と [ H ] と、更に [ I ] と [ H ] との結合による [ BN(息子) ] とが示されています。

[ AIMA(明るく身篭った母) ] は [ AMA(暗い不毛の母) ] に [ I(父) ] を結合させたものです。これは、「ゲマトリア(GMTRIA : Gematria)」では [ 1 + 10 + 40 + 1 = 52 ] となり、[ BN(息子) ] の数、[ 2 + 50 = 52 ] と同数になります。

彼女は「ThBVNH : Thebunah(the Special Intelligence)」とも呼ばれます。この彼女を表わす [ ThBVNH ] と言う語の中には、彼女、[ AIMA(明るく身篭った母) ] が産む双子の子供、[ IHVH ] の [ V(息子) ] と [ (最後の)H(娘) ] 、そして [ 息子 ] と [ 娘 ] とのそれぞれを表わすヘブライ(ヘブル)語、 [ BN(息子) ] [ BTh(娘) ] の綴りを見て取る事が出来ます。

「ビナー」は「峻厳の柱」の頂上に位置します。「コクマー」と同一の次元(水平)にあり、対を成す「セフィラ」です。

「ビナー」は神の超絶的な女性性、原初の女性原理、女性的受動的な(潜在的)力であり、未制限の「コクマー」の活動力、勢力、精力を受け留め(刺激する活動力を静め)制限を与える「セフィラ」です。「ビナー」は形の原理的概念であり、「コクマー」の限定者、器、基盤となる(原初の)形の寄与者、潜在する種(「コクマー」)を抱いて果実を産む女性です。「ビナー」は「コクマー」と言う精子によって刺激されるのを待つ静的受動的状態な卵子であり、また、「コクマー」の生命の衝動的力を受け止め、一定期間留めておく原初の子宮でもあります。「ビナー」は深淵下へと顕現するための生命を形作る場です。

「ビナー」には「土星の天球(ShBThAI : Shabatai)」が与えられています。「土星」は「クロノス」「サタン」などと関連付けられます。「クロノス(サタン)」は古き神であり、時の神であり、自分の子供を飲み込む神です。サタンは元は豊饒の神であり、死の与え手でもあります。ここに「ビナー」の持つ両面性、生命を育む母と飲み込む母が見て取れます。

魔術的イメージは「成熟した女性」、「母」です。「ビナー」に与えられた神名は [ ALHIM : Elohim) ] と [ IHVH ALHIM ] とです。大天使は [ TzPhQIAL : Tzaphkiel) ] 、天使の階級では [ ARALIM : Aralim(Active ones, thrones) ] 、「玉座(The Thrones)」です。

「ビナー」は神聖四文字、[ IHVH ] の最初の [ H ] 、天上の [ H ] です。

「ビナー」は「天上の母(the supernal Mother)」であって、これは「マルクト」、即ち、「下位の母(the inferior Mother)」「花嫁(Bride)」「女王(Queen)」「処女(Virgin)」と区別されなければなりません。

777キースケールは [ 3 ] です。

4. ケセド(ChSD : Chesed) - Mercy(or Love)

「ケセド」は「慈悲(Mercy)」を意味します。「深淵」下の最初の「セフィラ」です。「ケセド」は [ GDVLH : Gedulah) ] 、「偉大(Greatness)」、或は「壮大(Magnificence)」とも呼ばれます。第三の次元における「ビナー」の反映です。「水」の「セフィラ」であり、慈悲、父性愛の「セフィラ」です。

「ケセド」は「慈悲の柱」の中央に位置します。「ゲブラー」と同一の次元(水平)にあり、対を成す「セフィラ」です

「ケセド」は「ビナー」からの流出に対し(「深淵」下に於ける)発展、成長(繁栄)のための慈悲と恵みを与える者です。「ケセド」は全ての創造物を抱き抱え保護する者であり、威厳によって子を導く父であり、また、父性の持つその愛です。「ケセド」は愛の王、平和な時代における臣民の主、寛大で慈悲深き支配者、法律の制定者であると言えます。「ケセド」は生産的で活気を与えるエネルギーを持った「セフィラ」であり、「ビナー」からの流出は、ここに於いて組織、形成、構成、建設されます。「ケセド」は宇宙的な同化作用であり、生命体の成長を維持する力、組織化し組み立てる建設力であると言えます。「ケセド」は「深淵」下での繁栄を願い管理し、運営する者です。

「ケセド」には「木星の天球(TzDQ : Tzedeq)」が与えられています。「木星」は神々の王、「ジュピター(ユピテル)」などと関連付けられます。「ジュピター」は下位の最高神、水と雨と雷の神です。木星は拡大、広がり、発展(繁栄)、成長の惑星です。「ケセド」は深淵下の7つの「セフィラ」(顕現世界)の長(下位の最高神)あると言えます。

魔術的イメージは「冠を身に付け、王座に就いた強大な王」です。神名は [ AL : El(the Mighty One) ] 、大天使は [ TzDQIAL : Tzadkiel ] 、天使の名前は [ ChShMLIM : Chashmalim(Brilliant ones) ] 、[ Scintillating Flames ] (Ezekiel 4:4)です。

777キースケールは [ 4 ] です。

5. ゲブラー(GBVRH : Geburah) - Strength, Severity, Fortitude

「ゲブラー」は「力(Strength)」を意味します。この「セフィラ」は「正義(DIN : Deen)(Justice)」とも呼ばれます。また、「畏怖(PhChD : Pachad)(Fear)」とも呼ばれます。第三の次元における「コクマー」の反映です。「火」的「セフィラ」であり、必要とされる破壊的力の「セフィラ」です。

「ゲブラー」は「峻厳の柱」の中央に位置します。「ケセド」と同一の次元(水平)にあり、対を成す「セフィラ」です。

「ケセド」が保護し、維持する力であれば、「ゲブラー」は破壊する力、破壊的な力であると言えます。それは物事が発展、進化、成長を続けるために必要な力であり、停滞した物事を先へと進めるために求められる力、行き詰まった古い体制、静止して安定した体系を打ち破り覆す破壊の力です。「ゲブラー」の力がなければ物事は停滞し、腐敗して行くでしょう。優しい王の統治下で平和に暮らしながら文明を発展させて行くためには無制限の父の愛だけでは足りません。そこには「ゲブラー」の力が必要となります。それは王国の領土を敵から守る勇敢な力であり、王国の秩序を保つ矯正の力です。「ケセド」が大宇宙の同化作用であれば、「ゲブラー」は大宇宙の異化作用です。「ケセド」が流出を受け留め組織化する器であれば、「ゲブラー」は組織化された器の中を掻き混ぜる力です。「ケセド」が神の愛であれば、「ゲブラー」は神の峻厳です。神は無制限の愛の与え手であると同時に恐怖の与え手、正義の力の執行者でもあり、人々にとっては敬意を払うべき者であり、畏怖すべき者です。「ケセド」が法であれば、「ゲブラー」は法によって執行される力、正義の力、矯正する力であると言えます。法は秩序を築き人々を護りますが、秩序を乱す者に対しては矯正する力が必要となります。「ケセド」が生命体の成長を維持する仕組み(栄養を体内へと摂取する機能、細胞分裂など)であれば、「ゲブラー」は成長を行き詰まらせないために必要となる破壊の力(食物を砕く異化作用、新陳代謝など)であると言えます。

この「ゲブラー」の破壊の力は(常に内在はしていますが)求められた時にだけ活動的になるものであり、本来は受動的、消極的状態にあると言えます(また、そうあるべきことろです)。

「ケセド」と「ゲブラー」とは、本来、対になって働かなければいけない力であり、「ケセド」と「ゲブラー」とのどちらか一方しか働かないような状況は大きな不均衡を招きます。これは他の対立する「セフィラ」の間についても同様に言える事です。「ケセド」の慈悲深き無償の愛が(「ゲブラー」の持つ厳しさなく)一方的に過剰に働けば、それは、緊張感の欠如、怠惰、怠慢、停滞を生み出すものとなって仕舞います。「ケセド」の包み込み保護し、愛を与え養う性質は、人々に居心地の良さを与えるものですが、安易に凭れ掛かる者を腐敗、堕落させます。(例えば、過保護で罰則(「ゲブラー」)のない状態は人を増長させます。それは人を悪へと走らせる原因にもなります。)「ケセド」は静止した清らかな水のようなものであると言えます。それは静かで安定しており、生命が育まれ易い環境を提供しますが、対流がなければ(幾ら清らかであっても)後(ある程度繁栄した後)は淀んで行くだけの運命を余儀なくされるものとなって仕舞います。(この場合、水は育むものから逆に、単に腐敗を助けるものへと変わります。)破壊の力の働かない状態にある「ケセド」は、ある程度の成長、発展、繁栄した後に停滞、飽和によって腐敗して行くと言えるでしょう。「ゲブラー」の(常に適度に働いている状態であれば物事を発展させるための協力者となる)活性化の力も、また、(「ケセド」の慈悲なく)一方的に過剰に働けば、滅びを齎すだけの恐ろしい(正義を持たない)破壊の力となって仕舞います。相手を許し抱きとめる寛大さを持たない状態にある「ゲブラー」は、人々に恐怖を与え、縛り付け、滅ぼす、相手を傷つけるためだけの力に成り下がり、自分勝手な正義によって抑圧と破壊を続けて行くものとなるでしょう。「ケセド」と「ゲブラー」は互いの力が適度に働いている状態、即ち、「ケセド」の寛大、慈悲、保護の下にあって「ゲブラー」が(常に存在し、)求められた時に必要なだけ働く状態が理想であると言えます。2つの「セフィラ」の均衡が適切にとられた状態であれば、それらは拡張と収縮を生み出し、物事を発展させて行く力となりますが、(他のセフィラでも同様ですが、)それらの均衡が大きく崩れた状態で働けば、それは「クリフォト」的な力でしかなくなって仕舞うと言えるのです。

「ゲブラー」は腐敗を浄化する力、悪を滅ぼす裁きの力として働きます。これは人の悪が増した地上を浄化した洪水であり、堕落、腐敗した町、ソドムとゴモラとを滅ぼした硫黄の火、[ IHVH ] の裁きの力です。(「ノアの大洪水」は、偽典になると、地上に悪行が蔓延した原因となったグリゴリや、そのグリゴリと人間の娘の間に生まれ、地上に害を為していたネフィリム…謂わば神側の汚点を地上から消し去る、神側の後始末とも言える洪水になります…偽典ですが。)

(その一方で洪水からノア一家を助かるようにし、硫黄の火からロト一家を遠ざけたのが [ IHVH ] の「慈悲」(「ゲブラー」と対になる「ケセド」の性質)だと言えます(ロトの妻は逃げている途中で振り返ったため塩の柱となって仕舞い、救われはしなかったのですが…)。)

「ゲブラー」には「火星の天球(MADIM : Madim)」が与えられています。「火星」は戦いの神「マーズ」などと関連付けられます。「火星」は活動、勇気を示す惑星ですが、しかし、「火星」が過剰に力を発揮するとそれは残酷、破壊の力となります。

魔術的イメージは「鎧と冠を身に着けた戦車に乗る強大な戦士」です。神名は [ ALHIM GBVR ] (と [ ALH : Eloh ] )、大天使は [ KMAL : Kamael ] 、天使の名前は [ ShRPhIM : Seraphim(Fiery serpents) ] (Isaiah 6:6)です。

777キースケールは [ 5 ] です。

6. ティファレト(ThPhARTh : Tiphereth) - Beauty(or Mildness)

「ティファレト」は「美(Beauty)」を意味します。「ティファレト」は調和の「セフィラ」であり、「ケセド」と「ゲブラー」との均衡、また、「ティファレト圏」(「ケセド」「ゲブラー」「ティファレト」「ネツァク」「ホド」「イェソド」)の均衡であり、「生命の樹」全体の均衡の中心です。「深淵」下に於いては、唯一、「ケテル」と結ばれている「セフィラ」です。「ティファレト」は上位と下位の仲介者、媒介者、天上と地上の調停人であると言えます。

「ティファレト」は「中央の柱」の中央に位置します。「ケセド」と「ゲブラー」とは「ティファレト」に於いて均衡を保たれます。

「ティファレト」は「ケテル」の直接反射(反映)であり、「ケテル」の影響を(低次の形で)直接下位へと放射する「セフィラ」です。「ケテル」のエネルギーの分配者であり、下位へと永遠の生命を齎す「生命の授与者」であると言えます。「ティファレト」の太陽の輝きの後ろには「ケテル」と言う太陽が存在します。「ティファレト」の輝きは「ケテル」の反映によるものであり、「ケテル」は太陽の背後の太陽、キリストの後ろで輝く父なる神です。一者からの流出は、完全ではないにしろ、ここに於いてその純粋さを取り戻します。

「ティファレト」はキリスト中枢、受肉の場と呼ばれます。キリストは「父なる神」から使わされた子であり、天と地(人間)の仲介者であり、復活し王国(「マルクト」)の王となる者です。「ティファレト(キリスト)」は「ケテル(父)」の子(受肉)であり、「マルクト(王国)」の王、統治者であると言えます。この「セフィラ」には、子(受肉した神)、犠牲になる神、また、酩酊の(恍惚を齎す)神が配属されます。

「ティファレト」には「太陽の天球(ShMSh : Shemesh)」が与えられています。「太陽」は生命の源である光を地上へと与える惑星です。「太陽」は太陽神、アポロ(Apollo)などと関連付けられます。「太陽」は生命力、活力、創造性、方向性を持った意志、復活、救済、健康などを示します。

魔術的イメージは「(甦った)威厳ある王、子供、十字架にかけられた神」です。(子は受肉、磔刑は犠牲、王は復活に当たります。)神名は [ IHVH ] 、「ALVH VDOTh : Eloah Va-Daath」、大天使は [ RPhAL : Raphael ] 、天使の名前は [ ShNANIM : Shinanim(kings) ] 、[ MLKIM : Malakim(kings) ] (Psalms 68:18)です。

「ケセド」「ゲブラー」「ティファレト」「ネツァク」「ホド」「イェソド」の6つを纏めて [ ZOIR ANPhIN : Zaur Anpin(the Lesser Countenance) ] 、「ミクロプロソポス(Microprosopus)(小さな貌)」と呼びます。「ティファレト」はその中心となる「セフィラ」です。この「小さな貌」は「MLK : Melekh(the King)」とも呼ばれます。また、「ADM : Adam」「BN(The Son)」「AISh(The Man)」とも呼ばれます。

「ティファレト(圏)」は神聖四文字、[ IHVH ] の [ V ] です。王国(「マルクト」)の王であり、花嫁(「マルクト」)の夫です。

777キースケールは [ 6 ] です。

7. ネツァク(NTzCh : Netzach) - Victory(or Firmness)

「ネツァク」は「勝利(Victory)」を意味します。「堅固(Firmness)」とも呼ばれます。「コクマー」の反映である「ゲブラー」の第五の次元に於ける反映です。自然の諸力、本能、感情、愛の欲望の「セフィラ」です。

「ネツァク」は「慈悲の柱」の最下部に位置します。「ホド」と同一の次元(水平)にあり、対を成す「セフィラ」です。

「ネツァク」は自然の諸力、物事の後ろにあるアストラル的な力(勢力)です。また、自然の繁殖力、結び付こうする力、湧き上がる動的創造的な諸力、本能、衝動、情念、感情、愛(繁殖の基盤)の住処であり、無意識(活動エネルギーの元)、潜在的に備わっている力、集合的無意識にある元型の諸力です。目ではなく知(「ホド」)によって知る事が出来るものであると言えます。

「ネツァク」には「金星の天球(NVGH : Nogah)」が与えられています。「金星」は愛と美の女神「ヴェヌス(アフロディテ)」などと関連付けられます。「金星」は愛、結び付ける力、(自然の)繁殖(受精)力などを示します。「火星」(男性的)と対をなす女性的な惑星です。「ネツァク」は自然の女神の天球です。

魔術的イメージは「美しい裸の女性」です。神名は [ IHVH TzBAVTh : Jehovah Tzabaoth(the Lord of Armies) ] 、大天使は [ HANIAL : Haniel ] 、天使の名前は [ ALHIM : Elohim(gods) ] 、[ ThRShIShIM : Tharshishim(the brilliant ones) ] (Daniel 10:6)です。

777キースケールは [ 7 ] です。

8. ホド(HVD : Hod) - Splendour(or Glory)

「ホド」は「栄光(Splendour)」を意味します。「ビナー」の反映である「ケセド」の第五の次元に於ける反映です。知性、思考、精神活動の「セフィラ」です。

「ホド」は「峻厳の柱」の最下部に位置します。「ネツァク」と同一の次元(水平)にあり、対を成す「セフィラ」です。

「ホド」は「ネツァク」によって刺激され活性化されます。「ホド」は「ネツァク」の湧き上がる力(自然の諸力、創造を刺激する力、愛や芸術の根源となる力、感情の力、本能の力)を捉える知性であり、「ネツァク」をイメージ化、観念化、定式化、組織化、言語化、具体化する力、即ち、「ネツァク」の自由に流れている力を安定、固定させ、実現させるために明確な(現実に適応した)形(像)へと変えて行く思考の力です。人間の持つ知性、思考力、洞察力などはここに含まれます。「ネツァク」が本能、衝動、アストラル的意識の力の面であれば、「ホド」は知性、思考、アストラル的意識の形の面であると言えます。「ネツァク」が自然の諸力であれば、「ホド」はそれを組織化して作用させる知性です。「ネツァク」が自然であれば、「ホド」は科学です。「ネツァク」が湧き上がって来る情熱的感情的な力、内的エネルギーであれば、「ホド」はそれを知覚し、整理、統一、制御を行なう知性です。「ネツァク」が先天的集団的無意識的な力であれば、「ホド」は後天的個別的意識的な力です。「ネツァク」が元型の動的自律的力であれば、「ホド」はその元型の力を受け入れイメージを与える力です。魔術に於ける「象徴」は、正に、「ネツァク」と「ホド」との結晶であると言えます。「象徴」は「ホド」が「ネツァク」を捉えて形を与えたものであると言え、「象徴」に内在する意味は「ネツァク」の内に求める事が出来ます。自然の諸力(生命力)を捉えて神様としての像(イメージ)を与えるのもこの「セフィラ」です。

「ホド」と「ネツァク」とは(「ケセド」と「ゲブラー」とがそうであるように)、本来、均衡を保ちながら対になって働かなければいけない力であると言えます。どちらか一方しか働かない状態であれば、それは「クリフォト」的なものとなります。「ネツァク」は本能的、感情的な力であり、「ホド」に刺激を与えるものであり、「ホド」は「ネツァク」から湧き出た力を受け取り、管理し、現実に適応させて行くものです。(「ホド」の思考がない状態で)「ネツァク」が一方的に働く状態は、制御、抑制のない本能や、思考の伴わない剥き出しの感情によって支配された状態を齎しますし、(「ネツァク」の動的なエネルギーの突き上げがない状態で)「ホド」が一方的に働く状態は、想像力に欠け、感情のない冷たく硬直した静的で孤立した思考を招く事になります。これらは共に現実での適応性を失っている状態であると言えます。「ネツァク」の欠如は人間から欲望、情熱を奪い、目的を見失わせます。「ホド」の欠如は人間の欲望を(現実に適応した形で)達成する手段を奪います。

「ホド」には「水星」の「天球(KVKB : Kokab)」が与えられています。「水星」は最も近くで「太陽」の光を受けている惑星です。二重性と流動性と言った性質を持っています。「水星」は「メルクリウス(ヘルメス)」「トート神」などと関連付けられます。「ヘルメス」は智慧を司る神、科学や弁舌の神であり、神々の使者でもあります。「水星」は言葉(ロゴス)、智慧、科学、言葉による意志や思想などの伝達、表現能力などを示します。「ホド」は魔術の天球です。

魔術的イメージは「両性具有者」です。神名は [ ALHIM TzBAVTh : Elohim Tzabaoth(the God of Armies) ] 、大天使は [ MIKAL : Mikael ] 、天使の名前は [ BNI ALHIM : Beni Elohim(the sons of the Gods) ] (Genesis 6:4)です。

777キースケールは [ 8 ] です。

9. イェソド(ISVD : Yesod) - the Foundation(or Basis)

「イェソド」は「基盤(the Foundation)」を意味します。「イェソド」は「ティファレト」の反射です。「公正が世界の基礎である(TzDIQ ISVD OVLM)(The Righteous is the Foundation of the World)」とも呼ばれます。

「イェソド」は「均衡の柱」の下部、「マルクト」の一段上に位置します。「イェソド」は「ネツァク」と「ホド」との均衡です。

「イェソド」はより高位の8つの「セフィラ」(「ケテル」から「ホド」まで)の力を纏め、束にして、物質世界へと導き送り出す「セフィラ」です。一者からの流出は「物質界」へと至る前に全てこの「セフィラ」に集められ、形成構築(調整統合)され、最終的な形に形付けられます。「イェソド」に形成されたイメージは現実を形成する設計図であり、(後は物質を帯びるだけの状態にある)物質の前駆物であると言えます。故に「イェソド」は「物質界」の基盤です。(逆に言うと、物質となった世界(我々の世界)から「物質」を取り除いて残る世界(勢力)が「イェソド」であるとも言えます。)「物質界」である「マルクト」の前段階である「イェソド」は、物質界の骨組み、現象と実在の中間者、生命力の媒介者であると言えます。

「ネツァク」と「ホド」とがアストラル的な力と形であれば、「イェソド」はそれらが融合し活動するアストラル領域であると言えます。「ネツァク」と「ホド」とが無意識の力とイメージとであれば、「イェソド」は無意識の領域であると言えます。「ネツァク」の力は「ホド」を刺激、活性化し、「ホド」によってイメージを与えられ、「イェソド」に於いて顕現し、活動します。「ネツァク」が無意識の深層に内在する(潜在的活動の)力であり、「ホド」がその力に付加される形、「集合的無意識」の「元型」的イメージであるならば、「イェソド」は「元型」からのイメージが力を振るう活動の領域であると言えます。「イェソド」は流出の受容器、イメージの宝庫、幻想の天球です。夢、想像、幻想、心霊現象、アストラル体などと関係のある「下位の星の世界」です。「イェソド」は人体の性的な活動力、性器(本能と手段の結合であり、形を生み出すための(物質の)前段階が潜在している器官)に関連します。

魔術師は「マルクト(活動界)」への流失の前段階である「イェソド(形成界)」に於いて影響を打ち立てる(即ち、「ネツァク」と「ホド」とを結び付けて「イェソド」に確立する)事により、活動界の現象を変化させる事が可能であると言えます。「イェソド」に介入する魔術師の武器は意志力と想像力とです。

「イェソド」には「月の天球(LBNH : Levanah)」が与えられています。「月」は夜の「太陽」であり、闇の世界を怪しく照らし出す惑星です(「太陽」も「月」も惑星として扱います)。「月」は霊の基盤であり、変化の「象徴」です。海とも深く関っています。「月」の「女神ディアナ : Diana(アルテミス : Artemis)」などと関連付けられます。「月」は受容性、変化、本能、想像、夢の領域、基盤などを示します。

魔術的イメージは「力強く美しい裸の男性」です。神名は [ ShDI AL ChI : Shaddai El Chai(the Mighty Living One) ] 、大天使は [ GBRIAL : Gabriel ] 、天使の軍は [ KRBIM : Kerubim(Angels of elements) ] です。

777キースケールは [ 9 ] です。

10. マルクト(MLKVTh : Malkuth) - the Kingdom

「マルクト」は「王国(the Kingdom)」を意味します。(この「マルクト(王国)」は「ティファレト(王)」が治める王国です。)一者からの流出は8つの「セフィラ」を経て、「イェソド」で纏められ、この「マルクト」において最も濃密な形態、物質として顕現します。全ての流出は「ケテル」に始まり「マルクト」へと行き着きます。「マルクト」は「ケテル」の潜在が結晶となった世界、一者の物理的顕現です。「マルクト」は「生命の樹」の最下「セフィラ」であり、流出の終点ですが、カバラ的輪廻転生論から見れば折り返し地点でもあると言えます。

「マルクト」は「均衡の柱」の最下部に位置します。

「マルクト」は「イェソド」の天球で形成された形が物質を纏って顕現する「セフィラ」です。アストラル領域に形成された形相はこの物質界において質料と1つになり顕現に至ります。「マルクト」は9つの「セフィラ」の影響を全て受け留める、謂わば上位の9つの「セフィラ」の総合体であると言えます。「イェソド」がアストラル領域であるのに対し、「マルクト」は五感を通して知る世界、四大元素の領域です。「イェソド」が活動界の鋳型、形相であれば、「マルクト」は鋳型に嵌め込む粘土、質料であると言えます。「マルクト」は「イェソド」で生み出された力が作用となって現れる領域です。「イェソド」に確立された影響は流出の原理によって「マルクト」に於いて現象化します。

「マルクト」には「四大元素の天球(ChLM ISVDVTh : Cholim Yesodoth)」が与えられています。「マルクト」は四等分され、「四大」が配属されます。

魔術的イメージは「冠とヴェールを身に着けた若い女性」です。神名は( [ ADNI : Adonai ] ) [ ADNI MLK : Adonai Melekh(王である主) ] 、または [ ADNI [[HARTz]] : Adonai ha-Aretz(大地の主) ] です。大天使は [ SNDLPhVN : Sandalphon(MTTRVN : Metatron) ]、 [ AShIM : Ashim(the Flames) ] (Psalms 104:4)です。

「マルクト」は「ビナーの玉座に座る者」「門(The Gate(ShOR(※1), ThROA(Chaldee)(※2))」「死の門(Gates of Death)」「死の影の門(Gates of Shadow of Death)」「涙の門(Gates of Tears)」「正義の門(Gates of Justice)」「祈りの門(Gates of Prayer)」「力強き者達の娘の門(Gate of Daughter of Mighty Ones)」「エデンの園の門(Gate of Garden of Eden)」とも呼ばれます。「マルクト」は「下位の母(the inferior Mother)」であり、「女王(The Queen(MLKH))」「娘(The Daughter(BTh))」「花嫁(The Bride(KLH))」「ミクロプロソプスの花嫁(the Bride of Microprosopus)」「処女(The Virgin(BThVLH))」です。

(※1 「テムラー」によって、[ OShR = 10 ] となります。即ち、[ ShOR ] の文字の位置を入れ替えて [ OShR ] とする事によってヘブライ語の [ 10(OShR(Ten)) ] と言う意味の単語になります。)

(※2 「ゲマトリア」によって、[ ThROA = 671 ] となり、これは、[ ADNI = ALPh + DLTh + NVN + IVD = 671 ] と同数となります。即ち、[ ThROA = Th(400) + R(200) + O(70) + A(1) = 671 ] であるのに対し、[ ADNI ] で使われている文字をそれぞれの文字の名前の綴りに変え、[ ALPh + DLTh + NVN + IVD ] とし、そしてそれぞれを計算すると… [ ALPh = A(1) + L(30) + Ph(80) = 111 ] [ DLTh = D(4) + L(30) + Th(400) = 434 ] [ NVN = N(50) + V(6) + N(50) = 106 ] [ IVD = I(10) + V(6) + D(4) =20 ] となり、それらを足すと [ ADNI = ALPh(111) + DLTh(434) + NVN(106) + IVD(20) = 671 ] となり、[ ThROA = 671 ] と同数になります。)

「マルクト」は神聖四文字、[ IHVH ] の最後の [ H ] 、下位の [ H ] 、息子(「ティファレト」)の配偶者です。

「マルクト」は「下位の母」であって、「ビナー」と区別されなければいけません。「マルクト」は「息子(「ティファレト」)」の「花嫁」であり、「息子」と結婚し、「ビナー」「天上の母」「霊の玉座」へと至ります。

(殆ど同じですが、「シェキナー(聖霊)」を使って言うと…)「シェキナー(Shekinah)(神の霊)」(流出の神性)は宇宙を生んだ創造的な運動であり、宇宙における顕現物全ての原動力です。この「シェキナー」は全ての「セフィラ」を創造した(活動的)後、最後に「マルクト」(物質)の内に休息し、眠りに就きました(受動的)。この潜在する「シェキナー」を上手く目覚めさせるために、6つの「セフィラ」、「小さな貌」は清められなければなりません。(それが適わない時は彼女は再び「マルクト」へと退き、眠りに就きます。)休息(受動的状態)から目を覚まし活動的状態になった彼女は、再び彼女の伴侶(Ehieh)と結合するために我々を生命の樹の上方へと導きます。

777キースケールは [ 10 ] です。

― NOTE ―

紹介文章に於いては、「マクロコスム的に見て」「ミクロコスム的に見て」と言った事をその都度書いていない場合が殆どです。また、(諸説ある中から)本筋を逸脱した解釈を取り入れている部分も多々あり、読んで行くに当たってある程度の注意が必要であるものと思われます。

カウンター
^